日韓関係に絡む以下三件の裁判について近ごろ韓国の司法にて判決が出た。
①従軍慰安婦支援団体出身の韓国国会議員が従軍慰安婦への支援金を横領した容疑で起訴された裁判の二審で一審より重い有罪判決が出たこと。
②従軍慰安婦の研究者がその研究発表により従軍慰安婦への名誉を貶めたとして起訴された裁判が無罪の方向で差し戻されたこと。
③対馬から韓国人窃盗団により盗まれた仏像の所有権が韓国の最高裁判所により日本の寺に所有権ありと判示されたこと。
いずれも常識的に考えれば妥当な判決のように見える。一時期にはまるで”反日無罪”というように、日本に対してならどんな理不尽と見えることでも日本へ有利な判決は一切まかりならぬと思っているように見えた韓国の司法だが、少しは変わったように見える。
変わった理由として以下が考えられる。
1)時間がたって冷静に考えてみれば上記のような判決になる以外にないと韓国司法の人や韓国国民が気が付いた
2)比較的親日的な政策をとる現在の保守政権の意向を忖度する必要がある
3)元従軍慰安婦とされる人が日本政府を訴えた裁判で日本政府が主権免除の原則を主張して対応しなかったため日本政府を有罪と判示したが、国際法に反する形での判決は結局全く効力を生むこと(日本政府から賠償金を得ることなど)ができず、返って韓国司法の権威を貶めたこと
などなど。
実際の理由は上記理由などが絡み合ったものだろう。ただ残っている韓国国内での日本関連の裁判にはまだ問題のあるものがある。
ひとつは日本政府を訴えた元従軍慰安婦とされるもうひとりの人の裁判で一審では日本政府の主権免除を認める判決が出た裁判の控訴審。もう一つはすでに三菱重工への請求権が最高裁判決で確定している元徴用工とされる人の三菱重工への賠償金現金化の裁判である。
前者については主権免除を認めるかどうかという国際法との絡みで大変困難な事態に直面してしまうことになるのが間違いない。
後者については三菱重工には元徴用工とされる人への賠償責任があると最高裁判決にて確定しているので韓国内のみの司法ロジックに従えば当然韓国にある三菱重工資産の現金化を行うという結論しかないが、その結論とすれば日韓請求権協定との絡みが出てこれも国際法上の大きな問題となることは見えている。
両者ともに訴えがなされてから時間がかなり立っているにも関わらず判決は出ていない。訴えた人はともに高齢だから、はた目から見れば”反日無罪”の雰囲気のなかで問題のある判決を出してしまったが、国際法との絡みで韓国司法は身動きが取れなくなってしまい、訴えた人が高齢であるのでその人たちが死ぬのを待っているように見える。死亡すれば遺族が裁判を引き継ぐのかもしれないが、遺族はあきらめることもあると思っているように見える。
または政権が代わってまた”反日無罪”の雰囲気が出てくるのを待っているのかな。(2023/10/29)