sbi様記事抜粋<先週の米国株式市場
S&P500指数は週間で0.5%、ダウ平均は0.6%、ナスダック指数は0.5%の下落でした。米10年国債利回りが4.6%近傍で高止まりするなか、高めのバリュエーション(S&P500指数の予想PERは2025年予想EPS基準で21.8倍)やトランプ次期大統領による政策の不確実性が気にされて軟調な展開となりました。1/2(木)には、テスラの自動車販売台数が市場予想を下回ったこと、アップルが中国で最新型iPhoneの値引き販売を行っているとの報道が相場の足を引っ張りました。
一方、1/3(金)には12月ISM製造業景気指数が前月の48.4から49.3へ予想の以上の改善となり、テスラやエヌビディアなど大型グロース株に押し目買いが入って反発しました。業種指数では、原油価格の上昇を受けたエネルギー、ディフェンシブの公益事業が上昇する一方、テスラを含む一般消費財・サービス、情報技術などの下落が大きくなっています。
下落率トップのテスラ(TSLA)は、10-12月期の販売台数が市場予想を下回り、年間で初めて前年比1.1%減となったことから、上昇が続いていた株価は調整に転じました。アップル(AAPL)は、販売テコ入れのために中国で最新型iPhoneの値引き販売を行っていると報じられて嫌気されました。
今週の米国株式市場
12月FOMCで2025年の利下げ回数予想が2回に縮小したことを受けて長期金利が上昇、そのまま高止まりしていることから、株式は軟調地合いのもみ合いとなっています。長期金利の一段高に対する警戒が上値を抑える一方、経済や企業業績は堅調で株価を支えているとみられます。今週は雇用統計をにらんでもみ合いとなる可能性が高そうですが、1/20(月)のトランプ次期大統領の就任式に向けては、楽観的な市場ムードが再び強まる可能性が高いとみられ、堅調が想定できるのではないでしょうか。今週の株価材料として、12月雇用統計、FOMC議事要旨、12月ISM非製造業景気指数、などが注目されます。
雇用統計の非農業部門雇用者数は8月7.8万人、9月25.5万人、10月3.6万人、11月22.7万人と凸凹してきました。直近4ヵ月の平均が14.9万人に対して、12月予想が16.0万人で、トレンドは概ね横ばい圏と言えそうです。インフレ高進の可能性が気にされていますので、弱めの数字のほうが相場には良いとみられます。前回のFOMC(12月17日、18日開催分)では、経済見通しでインフレと政策金利見通しが大きく上方修正され、2025年の利下げ回数が9月FOMC時点の4回から2回に下方修正されました。タカ派のFRBに市場が驚いてS&P500指数は12/18(水)に2.9%の大幅下落となりました。トランプ政権の政策が考慮されたのではないかとの観測もあり、その点は確認したいところです。
12月のISM非製造業景気指数は、前月の52.1から53.5に改善の予想です。昨年7月以来、51以上の高い水準で推移しており、非製造業は堅調が続いています。経済指標では上記のほか、1/8(水)に米国の12月ADP雇用統計(前月比13.3万人の予想)、ミシガン大学消費者信頼感(前月の74.0から73.9に悪化の予想)、などの発表が予定されています。
今週の5銘柄
年初にあたりまして、「2025年の注目銘柄5選」として、エヌビディア(NVDA)、サービスナウ(NOW)、アマゾン ドットコム(AMZN)、ネットフリックス(NFLX)、イーライ リリィ(LLY)を選んでご紹介いたします。
「2024年の注目銘柄5選」と比較して、昨年夏に世界的なシステム障害の原因となったクラウド ストライク ホールディングス A(CRWD)に替えて、アマゾンドットコムを新たに加えています。
クラウド ストライク ホールディングスの株価は、システム障害を受けて大幅安となったあと、順調な戻り歩調となっていますが、受注鈍化など事故の影響が出てくる可能性を考慮しました。
今年のS&P500指数の年末ターゲットは米大手証券の平均で6,500ポイント程度と、現在値から約9%の上昇が期待されています。これをアウトパフォームする可能性があると想定しています。
「2024年の注目銘柄5選」のパフォーマンスは、S&P500指数が23%上昇に対して74%と、2.7倍となったエヌビディアの寄与もあって、非常に好調でした(図表3)。
図表3 「2024年の注目銘柄5選」のパフォーマンス
注:上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4 今週の5銘柄の投資指標
銘柄名(コード) | 株価 (1/3) (ドル) |
予想PER (倍) |
目標株価 (ドル) |
目標株価 乖離 (%) |
来期予想 増収率 (%) |
来期予想 ESP増加率 (%) |
時価総額 (億ドル) |
エヌビディア(NVDA) | 144.47 | 49.1 | 173.07 | 19.8 | 52.8 | 49.9 | 35,381 |
サービスナウ(NOW) | 1,073.77 | 77.2 | 1095.08 | 2.0 | 20.6 | 19.5 | 2,212 |
アマゾン ドットコム(AMZN) | 224.19 | 36.7 | 242.87 | 8.3 | 10.9 | 14.7 | 23,574 |
ネットフリックス(NFLX) | 881.05 | 44.3 | 861.12 | -2.3 | 12.4 | 19.8 | 3,766 |
イーライ リリィ(LLY) | 781.98 | 59.4 | 994.99 | 27.2 | 29.2 | 73.2 | 7,423 |
取引 | チャート | 銘柄 | 株価 (1/3) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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買付 | エヌビディア(NVDA) | 144.47ドル | 32.8 |
【新製品ブラックウェルはフル生産】 ・AI計算にGPU(画像処理半導体)が適していることにいち早く気付き、また、GPUをコンピュータとして使うためのソフトウェアへの投資を行ってきたことから、需要が急増するAIコンピュータの分野で支配的地位を確立しています。 ・AI関連の物色はAIコンピュータ一辺倒から徐々にソフトウェア分野にシフトしていくと考えられますが、同社はAIのソフトウェア分野でも業界トップのリソースを保持しているとみられ、引き続き活躍が期待されます。11-1月期の売上ガイダンスが物足りないとの評価ですが、需要不足ではなくサプライチェーンの制約によるものと考えられ、AIコンピュータの需要超過の状況は継続しているとみられます。 |
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買付 | サービスナウ(NOW) | 1073.77ドル | 64.6 |
【企業のAI利用拡大局面で活躍が期待される】 ・企業向けに各種ソフトウェアを提供して、業務の自動化を促進するサービスを提供しています。この仕事はAIとの親和性が高く、生成AIが売上増につながりやすい企業として注目されます。生成AIを業務執行に取り込むためのバーチャル・エージェント「Now Assist」を投入、エヌビディアが企業向けの分野で同社を提携先として選んだほか、コンサルティング大手のアクセンチュア、デロイトなど企業向けサービスで重要な企業と提携を進めています。 ・7-9月期決算は市場予想を上回る好調で、通期の売上見通しを引き上げました。生成AIの機能を製品に組み込み、製品価格を引き上げられていることが好結果につながっているようです。
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買付 | アマゾン ドットコム(AMZN) | 224.19ドル | 32.0 |
【売上・利益とも強い基調】 ・新型コロナによる混乱の影響を抜けてネット通販事業は復調の勢いを強めています。小売、クラウドサービス、広告への展開とともに、スピード、コンビニエンス、バリューに訴求する戦略によって、市場シェアの拡大とともに利益率の改善が期待されます。AWSの利益率はAIへの投資によって上下する可能性はありますが、中期的な拡大トレンドは変わらないと考えられます。 ・7-9月期はクラウドサービスAWS部門の営業利益率が前年同期の30%から38%へ大幅に改善して、EPSは前年同期比44%増、市場予想を25%上回りました。北米部門売上が前年同期比9%増、海外部門売上が同11%増と、AWS以外も好調でした。 |
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買付 | ネットフリックス(NFLX) | 881.05ドル | 36.9 |
【10-12月期の加入者純増にも期待】 ・動画配信サービスの最大手です。オリジナルコンテンツの創作能力や幅広いコンテンツの品揃えよって盤石な地位を占めつつ、広告付きプランの導入および共有アカウント対策によって、全世界で5億人のターゲット市場(中国を除く)の取り込みが進むと期待されます。 ・7-9月期の加入者純増が507万人で市場予想を上回って好調で、10-12月期もマイク・タイソンの復帰試合、クリスマスのNFL2試合配信、続編が待たれていた「イカゲーム2」などで勢いが維持されると期待されます。ライブイベント分野への事業展開を明確化しており、その効果が注目されます。 |
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買付 | イーライ リリィ(LLY) | 781.98ドル | 34.3 |
【株価下落は投資のチャンス!?】 ・新型の糖尿病治療薬、肥満治療薬として需要が拡大している「GLP-1受容体作動薬」は2030年に1,000億ドル(約15兆円)の市場になるとの予想があり、同社はデンマークのノボノルディスクとともに市場を2分すると期待されています。先行したノボノルディスクの肥満治療薬「ウゴービ」は既に2022年に投入されていますが、臨床試験のときの平均体重の減少は、「ウゴービ」が約15%、「ゼップバウンド」が約21%でした。 ・7-9⽉期は成⻑をけん引している肥満治療薬「ゼップバウンド」、糖尿病治療薬「マンジャロ」の売上がいずれも予想を下回りました。両薬とも品不⾜が長く続いていたため、流通在庫が溜まっていた影響を受けたとみられ、市場拡⼤トレンドの変化ではないとみられます。また、通期EPS見通しを下方修正していますが、買収企業の仕掛研究開発費の計上が主因です。 |
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
6(月) | ・米製造業受注(11月) | |
7(火) | ・米貿易統計(11月) ・米求人労働異動調査(11月) ・米ISM非製造業景気指数(12月) ・3年国債入札 |
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8(水) | ・ユーロ圏景況感(12月) ・米ADP雇用統計(12月) ・FOMC議事要旨(12月17日、18日開催分) ・10年国債入札 |
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9(木) | ・米チャレンジャー人員削減(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月4日に終わる週) ・30年国債入札 ・リッチモンド連銀のバーキン総裁が講演 ・フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が講演 |
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10(金) | ・米雇用統計(12月) ・米ミシガン大学消費者信頼感(1月、速報値) |
デルタ航空、コンステレーションブランズ ウォルグリーンブーツアライアンス |
13(月) | ・NY連銀1年インフレ期待(12月) | |
14(火) | ・NFIB中小企業楽観指数(12月) ・米生産者物価指数(12月) |
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15(水) | ・米消費者物価指数(12月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(1月) |
JPモルガンチェース、ゴールドマンサックス ウェルズファーゴ、シティグループ、ブラックロック |
16(木) | ・米フィラデルフィア連銀製造業景気指数(1月) ・米新規失業保険申請件数(1月11日に終わる週) ・米NAHB住宅市場指数(1月) |
バンクオブアメリカ、ソルベンタム、モルガンスタンレー ユナイテッドヘルスグループ |
17(金) | ・米住宅着工件数・建設許可件数(12月) ・米鉱工業生産(12月) |
シュルンベルジェ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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