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落語「あたま山」

2013-06-25 | 落語

 ひどくけちな男がサクランボを食べているうちに、吐き出すのがもったいなからといって、種まで飲み込んでしまった。この種が体内のちょうどいい温かさの中で芽を出し、グングンと生長して、とうとう、男の頭を突き抜けてりっぱな桜の木になった。

 やがて春になると、あたまの上の桜はみごとな花を咲かせる。これが「あたま山」として、町中の評判になり、噂を聞きつけた花見客がドンドンとやってきて、男の頭の上で、飲めや歌えやのドンチャン騒ぎを始める。うるさくてたまらないので、男はとうとう怒り出して、この桜の木を引き抜いてしまった。根っこから抜いたために、その後には大きな穴ができてしまった。

 ある日、用足しに出かけた帰りに夕立にあってしまい、頭の穴に水が溜まってしまった。だが、この男けちだから、水を捨てようとしない。そのうち、それが池のようになって、鮒や鯉が住み着くようになって。そうすると、今度は子どもたちが日中釣りにやってくる。ワイワイガヤガヤ喚いたり泣いたりして大賑わい。夜になって、子どもたちが帰って、やれやれと思っていると、今度は大人たちが舟遊びに興じたりする。

 ある晩、やってきた遊び人二人連れ、船を焦がせて、ごっそり魚を持ち帰ろうとする。しかしなかなかうまくいかず、夜通し、「船をこっちへ回せ」「そりゃ無理だよ」「おい釣れたぞ」そう思ったら、それが草鞋。二人して大笑い。そのまま二人は朝まであっちへ漕いで網を入れ、、こっちへ漕いでは網を入れる。

 我慢に我慢を重ねていたが、ついに我慢できなくなった男は、頭の池に身を投げて死んでしまったとさ。

参考:「古典落語100席」、「落語手帳」


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