江戸時代、果師(はたし、または、はてし)と呼ばれる職業があった。骨董(こっとう)の仲買商だ。高価なものを安く買い取って、高く売りつけるのが商売。
さて、ある果師、江戸では、なかなか高価なものが見つからないので、掘り出し物を求めて地方を歩き回っていた。足を棒にして、探したが収穫がなく、川のほとりの茶店で一休みしていると、そばで猫が使っている皿を見ると、『高麗の梅鉢』という逸品だ。「しめた!」と思い、一計を案じた果師は、茶店のおやじから、まず猫を3両で買い付けた。
「ところで、猫ってやつは、食いつけない器だと食わねえっていうから、この皿、持ってって、これで食わしてやろう。」
「それはだめです。勘弁してくださいな!その皿は「絵高麗の梅鉢」というもので、3両で買い手がいくらでもあるんですから」
「へえ、そうかい!だけど、なんでまたそんな高い皿で、猫に飯を食わせたりするんだい?」
「へへへ、これでおまんまを食べさせておりますとね、時々猫が3両で売れますんで。」
(原話1821年瀧亭鯉丈作『大山道中膝栗毛』三篇-下)
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