あべっちの思いをこめた雑記帳

第一歩

 まずはそろ~りと立ち上がる。
 頭をゆっくりと亀さんのように出して、両手を付いて、それからのことだけれど、布団から一生懸命出ようとする。そして、立ち上がってどこか様子が違うことに気づく。

 わかるような、わからないような。いつもの自分の家とは感じが違う。まわりには人の声もないし、だ~れもいない。「いったいどうしちゃったんだろう」そう思っているのかもしれない。泣くよりも、不思議さのほうが先なんだろうか。
 だって、おじいちゃんおばあちゃんの家に初めて泊まったんだもの。布団もタンスもテレビも窓も、ぜ~んぶ違う。

 立ち上がって、あたりを見まわす。体も首も一緒になって、すこしずつではあるが、キョロキョロではなくゆっくりとです。
そしてようやく自分の家と違うことに気づく。

 その時、昨夜の記憶が甦ったのだろうか、出入り口の方を見つけた。そして、足をそちらへ向けようとする。
  小さいけれど
  か弱いけれど
  短いけれど
 父母を見つけに差し出そうとする足。

 「おはよー」。その時、お父さんの声が聞こえた。
 第一歩は瞬間、とっても強かった。父へ向かって。
 今日という日に向かって。
 
  ひょっこりひょっこりあっちこっちに顔を出す一歳半の忍者は元気
       平成30年6月 名言はがき等コンクール
               一般財団法人 ゆうちょ財団

                     「つれづれ(138)第一歩」

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