雨ふり
雨 雨 ふれふれ 母さんが
蛇の目で おむかい うれしいな
ぴっち ぴっち ちゃっぷ ちゃっぷ
らん らん らん
大正14年に北原白秋が作った童謡。当時は題名も本文もすべてカタカナ書きであった。中山晋平のスキップのリズムがいかにも軽快で心地よい。
これはすっごく楽しい歌ですねという声を時々耳にする。でも、ほんとうにそうなのだろうかと耳をかしげることがしばし。たしかに曲も詩も一見そういうふうに見受けられる。
しかしこの歌は、雨の日を楽しむ子どもの姿を歌ったものではない。その裏には、思いやりにあふれる模範的な子ども像が描かれている。
もっと踏み込んで言えば、人として生きていくのに大切な思いやりの心を秘めた歌といっても言い過ぎではないだろう。
ぼくなら いいんだ 母さんの
大きな蛇の目に はいってく
ぴっち ぴっち ちゃっぷ ちゃっぷ
らん らん らん
という第5連がそれを如実に表している。
もしこれが唱歌であったなら、困っている人を見たら親切にしましょうねという意を込めた詩がきっと表面に出てくると思う。でもさすがに白秋。その部分はさらりと言い表している。
7年くらい前に、とある場所のカラオケ店に入ったことがある。その時の最後の締めは意外にもこの歌だった。Nさんと一緒に歌ったが、その時きっとお互いの心には「思いやり」というものをしっかりと刻み込んで歌えたなと思う。
私にとって、忘れられない歌唱となった。
「童謡唱歌歌謡曲など(30)雨ふり」