なぜ手賀沼は日本一汚い湖になったか
湖と沼の違いは、中央の最も深い湖底に植物が生えているかどうかである。湖は湖底が深いため、日光が十分届かず、植物が生えづらい。それに比べ沼の場合は湖底が浅く、植物が生えている。つまり沼は湖に比べ浅いのである。
6千年前頃の縄文時代、海面が最も上昇した時、低地の手賀沼は海(香取の海)で、周辺の高台は島であった。その後徐々に海面が下がり海は後退し、手賀沼は海から川へ、さらに沼となっていった。
現在の手賀沼はほぼ東西に伸びる細長い浅い湖、つまり沼である。西から大堀川、南から大津川が流れ込み、手賀沼から東に伸びる手賀川を経て、利根川に流れ出る。
1950年代まで手賀沼の水は底が透き通って見えるほど澄んでいて、夏には子ども達が泳いで遊び、漁師は漁に出るとき沼の水をすくって飲んだという。しかし、1960年頃から手賀沼流域で住宅化が急速に進むと、大量の生活排水が沼に流れ込み水質を悪化させた。
こうして手賀沼は、環境庁(現在は省)の調査が始まった1974年から2000年まで、27年間日本一汚濁した湖沼という不名誉な記録を続けた。
北千葉導水路による水質改善
北千葉導水路は2000年に完成した。これ以降水質は改善され、日本一汚濁した湖沼の汚名を払拭した。北千葉導水路とは何なのであろうか。これは東の利根川、手賀沼、西の江戸川を結ぶ地下水路である。
地上の水は大堀川、手賀沼、手賀川、利根川へと流れる。北千葉導水路はその逆で、利根川、手賀沼、大堀川上流と流れ、さらに西に南北に伸び、東京湾に注ぐ江戸川へと流れる。逆流させるため、手賀川と利根川の合流点や手賀沼西南にある北千葉導水ビジターセンターなどに設置された揚水機で水頭を上げている。水路は大堀川を横切るとき、いったん大堀川の下に流れ落ち、川の下を横切ると再び上昇するといった逆サイホンの原理を利用している。
この流れによって、利根川が氾濫した時の手賀沼への逆流を防ぎ、さらに利根川の水を手賀沼に流し込むことによって水の循環を良くして水質を改善させるのである。
写真1 手賀沼西南にある北千葉導水ビジターセンター横の第2機場。左は手賀沼。右は利根川から地下水路を通って送られてきた水を溜め込む着水井。中央の建物は着水井から溢れだした水を手賀沼に流す注水樋管。
手賀沼を一周回ることができる歩行者、自転車専用道路が湖畔沿いを走る。毎年この専用導路を利用して手賀沼ハーフマラソンが開催されている。地下水路は手賀沼南側の専用道路の下に敷設されている。
写真2 手賀沼と南側湖畔沿いの歩行者・自転車専用道路。地下水路はこの下に敷設されている。
水質改善によって生物多様性が戻る
手賀沼にはかつて多種多様な生物が暮らしていたが、水質の悪化でかなり種類は少なくなってしまった。その後の水質の改善に伴って少しずつ生物が復活している。魚貝類及び水生動物、水生植物の代表例としてコイ、ウシガエル、アメリカザリガニ、ドブガイ、ヨシが挙げられる。水鳥の種類も多く、代表例としてコサギ、カルガモ、ユリカモメ、コブハクチョウが挙げられる。
コブハクチョウは雑食性で、1年中手賀沼に居座り、主に水生の植物を食べて暮らしている。最近は年々増え続け、雑食であるがゆえ稲を食い荒らすなど被害が拡大し、厄介者となっている。
写真2 菜の花を食べる白鳥。
(つづく)
湖と沼の違いは、中央の最も深い湖底に植物が生えているかどうかである。湖は湖底が深いため、日光が十分届かず、植物が生えづらい。それに比べ沼の場合は湖底が浅く、植物が生えている。つまり沼は湖に比べ浅いのである。
6千年前頃の縄文時代、海面が最も上昇した時、低地の手賀沼は海(香取の海)で、周辺の高台は島であった。その後徐々に海面が下がり海は後退し、手賀沼は海から川へ、さらに沼となっていった。
現在の手賀沼はほぼ東西に伸びる細長い浅い湖、つまり沼である。西から大堀川、南から大津川が流れ込み、手賀沼から東に伸びる手賀川を経て、利根川に流れ出る。
1950年代まで手賀沼の水は底が透き通って見えるほど澄んでいて、夏には子ども達が泳いで遊び、漁師は漁に出るとき沼の水をすくって飲んだという。しかし、1960年頃から手賀沼流域で住宅化が急速に進むと、大量の生活排水が沼に流れ込み水質を悪化させた。
こうして手賀沼は、環境庁(現在は省)の調査が始まった1974年から2000年まで、27年間日本一汚濁した湖沼という不名誉な記録を続けた。
北千葉導水路による水質改善
北千葉導水路は2000年に完成した。これ以降水質は改善され、日本一汚濁した湖沼の汚名を払拭した。北千葉導水路とは何なのであろうか。これは東の利根川、手賀沼、西の江戸川を結ぶ地下水路である。
地上の水は大堀川、手賀沼、手賀川、利根川へと流れる。北千葉導水路はその逆で、利根川、手賀沼、大堀川上流と流れ、さらに西に南北に伸び、東京湾に注ぐ江戸川へと流れる。逆流させるため、手賀川と利根川の合流点や手賀沼西南にある北千葉導水ビジターセンターなどに設置された揚水機で水頭を上げている。水路は大堀川を横切るとき、いったん大堀川の下に流れ落ち、川の下を横切ると再び上昇するといった逆サイホンの原理を利用している。
この流れによって、利根川が氾濫した時の手賀沼への逆流を防ぎ、さらに利根川の水を手賀沼に流し込むことによって水の循環を良くして水質を改善させるのである。
写真1 手賀沼西南にある北千葉導水ビジターセンター横の第2機場。左は手賀沼。右は利根川から地下水路を通って送られてきた水を溜め込む着水井。中央の建物は着水井から溢れだした水を手賀沼に流す注水樋管。
手賀沼を一周回ることができる歩行者、自転車専用道路が湖畔沿いを走る。毎年この専用導路を利用して手賀沼ハーフマラソンが開催されている。地下水路は手賀沼南側の専用道路の下に敷設されている。
写真2 手賀沼と南側湖畔沿いの歩行者・自転車専用道路。地下水路はこの下に敷設されている。
水質改善によって生物多様性が戻る
手賀沼にはかつて多種多様な生物が暮らしていたが、水質の悪化でかなり種類は少なくなってしまった。その後の水質の改善に伴って少しずつ生物が復活している。魚貝類及び水生動物、水生植物の代表例としてコイ、ウシガエル、アメリカザリガニ、ドブガイ、ヨシが挙げられる。水鳥の種類も多く、代表例としてコサギ、カルガモ、ユリカモメ、コブハクチョウが挙げられる。
コブハクチョウは雑食性で、1年中手賀沼に居座り、主に水生の植物を食べて暮らしている。最近は年々増え続け、雑食であるがゆえ稲を食い荒らすなど被害が拡大し、厄介者となっている。
写真2 菜の花を食べる白鳥。
(つづく)
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