日本の「政府系通貨」には「貨幣」と「紙幣」があり、「金融系通貨」には「預金通貨」や「カード通貨」があります。まだ「通貨」としては認められてはいませんが、「通貨」に似た「仮想通貨」と呼ばれる「暗号資産」もあります。
紙幣: 日本銀行券とよばれる法定通貨。日銀の負債で、保有者の資産になり、政府が存続する限り額面での保障がある。
貨幣: 政府発行の硬貨で、誰の負債でもなく、保有者の資産になり、国民が政府を認める限り価値は保障される。
預金通貨: 市中銀行が発行する預金通帳の数字で、発行銀行の負債になり、通帳名義人の資産。但し、一行に付き1000万円までしか、保険での保証は無い。
カード通貨: クレジット(負債)、デポジット(保証金)、プリペイド(預け金)、デビット(資産)、等の「派生型通貨」や、ポイントカード等の「使途・地域限定通貨」で、発行企業体の保障がある。
「暗号資産」は「仮想通貨」と呼ばれていましたが、「仮想通貨」の範疇には「預金通貨」も含まれるので、ビットコイン等を「暗号資産」と呼び、「通貨」ではなくなりました。フェイスブック(FB)が発行しようとしている「リブラ」は「政府系通貨由来の派生型通貨(ステーブル通貨)」として考えられています。
「ステーブル通貨」は簡単に言うと、「各国の政府系通貨と双方向に交換出来る通貨」になりますが、正確には「発行体が各国の通貨由来の預金通貨(負債)を個人(資産)から買い取り、これを担保に発行する通貨」と言えます。
「リブラ」が巨大化した場合を考えると、FBは各国政府の「巨大な債権者」になり「モノ言う債権者」となり、世界を動かす存在になります。実際には日銀紙幣は100兆円程しか発行していないのですが、銀行による「預金通貨」は700兆円ほど発行されていて、「銀行FB連合」が政府日銀影響を及ぼす事が可能になります。具体的には、政府日銀に対する金融政策への干渉です。そこで、対応策として考えられるのが、政府発行通貨(貨幣:現在は硬貨のみ)。
今は、日本政府の「貨幣」は「硬貨」のみで5兆円程しか発行していませんが、これを「日銀紙幣(負債)」に代わりに「政府紙幣(負債ではない)」として発行する事で、FBのクビキから逃れることが出来ます。「日銀通貨」は商取引の決済用として「預金通貨」と同様の使途を認め、納税は「政府通貨」に限定します。
「政府通貨」は誰の負債でもないので、国民が国会を通して管理する政府の自由裁量で発行量を制御できます。外国での使用も自由ですが、政府には納税用途以外の受け取り義務は発生しません。つまり、民間での流通は自由ですが、負債ではないので政府の「外為交換義務」も発生しませんし、「信用創造」の対象でもありません。実態としては「金(ゴールド)の紙幣」と言えます。
「紙幣」とは言っても、最初は最大発行金額を書いただけの政府証書で、後は「暗号通貨」として流通させます。公共事業費の支払いや、社会保障費の不足分に使用し、受け取った人は自由に使用できますが、最終的には税金として回収されます。
政府は「国債」の代わりに「政府通貨」を、経済が停滞した時には多めに発行し、景気が過熱しそうな時には増税によって回収します。民間が「預金通貨」や「リブラ」で利益を上げても、納税は「政府通貨」でしか出来ないので、市中から「政府通貨」をかきあつめめなくてはならなくなり「リブラ」の価値は相対的に低くなります。勿論、民間は「預金通貨」や「リブラ」でも銀行経由では納税は可能なのですが、最終的には「日本銀行」が「政府通貨」を調達して政府に納税する事になります。
「国債の大量発行で、国の借金がタイヘンダー」とのバカ騒ぎをする人がいます。「日銀紙幣」の発行は、「政府通貨」と「永久無利子国債」とは同じ機能を持っている事を理解できない人への対応策なのですが、国民がこれを理解していれば「政府紙幣」を発行しなくても「国債の日銀買い取り」で十分対応できます。
昔から誤解されていた「通貨の物々交換起源説」と、正しい「通貨は負債と債権の記録説」との戦いから、「通貨の納税義務由来説」に一歩前進します。
「MMT」は「租税貨幣論」を土台にしていると言われていますが、現在の所、日本の法律では「貨幣」は「硬貨」のみなので「租税通貨論」が正しい呼び方です