テレビとうさん

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「自社株買い」 と 「企業防衛」

2022年03月01日 | 経済
 MAG2NEWS(2月24日)で【岸田首相「新しい資本主義」は怪しさ満点。国会答弁で判った日本国宰相の大誤解】と云う表題の、怪しさ満点の大誤解が書かれていますが、やはり書いたのは「東大卒の文系評論家」でした。

 まず、1ページ目の、
「そもそも株というのはその配当を期待して買うものですから、配当ができなければ企業の評価は下がり、株は叩き売られてやがて破滅します。」

ですが、配当を期待して買う主体は生保などの「年次決算(今では四半期決算)での受け取り配当利益を計上しなければならない長期保有の安定株主」であり、資本主義由来の「本来の投資家」ではありません。「資本主義」とは、誰もが(公平に)資本参加でき「経済主体」に成れる制度を言います。

 配当金を出すと「1株当たりの配当額」だけ「BPS(1株あたり純資産)」も減少するので、配当権利落ちと同時に理論株価は下落します。その時に株価が下落しない会社は「会社の将来価値」が配当金額を上回ると判断される場合です。

 つまり理論的には、配当を出さなかった場合は純資産が減らない事から株価は下がらず、「配当は持ち株の利回りに対しては中立」と云う事が出来ます。投資家はバカでは無いので、配当も将来予想も見通したうえで「会社の未来に投資」します。

 2ページめには「自社株買い」に関して、
「その時、たまたま資金に余裕ができたとしたら、株という名の借金を減らしておいて、1株あたりの利益を高めて株価を上げる、そうすれば将来に必要な場合には資金が調達できるし、株価を高く維持できるので買収などの危険が減るという話です。」

と、ウソが書かれています。「(既発)株」は(会社の)借金では無く、返却する必要のない「自己資本」です。

 企業としては「株式配当率」よりも「銀行借入れ(これが本当の借金)金利」が安い場合は、自己資本比率に拘ることなく有利な銀行借り入れをして「自社株買い」をします。最近の「自社株買い」の理由は「銀行借入利率が低い」のと「新規投資案件が無い」状態が継続している事です。つまり「デフレ」です。

 「自社株買い」には「自己保有」と「償却」がありますが、「自己保有」の場合は市場から買い上げる時に株価が上がる傾向がありますが、「償却」する場合は「一株当たりの利益」が増えるので、更に償却相当分の株価も上昇します。

 「将来の資金調達」の場合は、株式を追加発行するのですが、同時に「一株当たりの利益率」が減少するので、会社の将来性に変化が無い時は株価は下がります。

 「買収などの危険性」も「買収される株式の割合」が問題なのであって、「償却目的での自社株買い」の時は、株価が高くなっていても発行済み株式数が相当額分だけ減少している為に、敵対会社が同じ割合の株式を入手する買収資金は、「自社株買い」の有無とは関係なく、トータルでは変わりません。寧ろ「自社株買い」の保有株式には議決権が無いので不利に働く可能性が有ります。

 他にも、「海外資金を受け入れ、国内投資に寄与させて、GDPを増やすべき」とも言っていますが、「企業が買収されるのを防ぐには、自社株買いは有効」との整合性は取れません。勿論、自社株買いは「現株主(自社株保有役員なども含む)」の利益になり、悪い事では無いのですが、氏の主張する「海外資金の流入」を阻害する事になります。但しこれが、理論上は無関係な事は上記の通りです。

 それでも、論理構成や意味は間違っていますが、「とにかく、今回の国会論議は100%誤っています。質問もダメなら、答弁もダメです。」とする、結論だけは正しいようです。

 結論に合わせて論理を嵌め込む。これは「東大卒文系たる所以」かも知れませんww



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