「時代の証言」 100歳日野原重明氏

2011-10-06 19:19:53 | オピニオン・提唱・一筆啓上
75歳以上の挑戦、後押し
 
 10月4日に100歳の誕生日を迎えた聖路加国際病院理事長の日野原重明さんを取材した連載「時代の証言者」を再掲載します。記事は2007年6月13日から7月11日まで計21回にわたって読売新聞朝刊に掲載されました。年齢をはじめ内容は連載当時のものです。



 95歳で現役内科医の日野原重明は、早くから予防医療やターミナルケア(終末医療)の重要性を唱えるなど、医療改革の先頭を走ってきた。ミリオンセラー「生きかた上手」の著者として、ファンも多い。最後まで人生を輝かせる「新老人運動」に精力的に取り組む「元気」の達人が、超高齢社会へのメッセージを語る。(社会保障部 阿部文彦)



 僕は10月で96歳になります。毎日の睡眠時間は5時間ほどで、執筆で徹夜することも少なくないですね。

 もう10年も前のことだけど、85歳のころに、何で65歳以上を一律に高齢者と呼ぶんだろうと思ってね。自分はというと、階段も一段おきに駆け上がっていたから。

《国連が65歳以上を高齢者とし、全人口に占める割合を「高齢化率」と名付けて統計を取り始めたのが1956年(昭和31年)。55年に5・3%だった日本の高齢化率は2006年には20・8%へと上昇し、超高齢社会を迎えている》

 半世紀前、65歳の平均余命は12年しかなかったけど、今は65歳から20年以上も生きるでしょ。余生とは言えないほど長いよね。つまり、自分らしく生きる時間がたくさんあるわけ。そこで、10歳底上げして、続く世代のモデルとなるような75歳以上の高齢者に呼びかけ、「新老人運動」を始めたの。2000年に旗揚げしたんだけど、40代以上の若いサポート会員などを含め会員数は約5500人になるんだ。

 その年代の人たちは、あの過酷な戦争を体験し、戦後の高度成長をリードしてきた。そのような人が元気なままでいれば、日本を支える大きなパワーになるよね。

 生活ぶりなどをみると、25%が僕のようにすごく元気で、50%がまず元気。介護が必要な人が25%だけど、そのうちの5%は寝たきりなんだね。もし、この25%の人たちが、上手に自立すれば、介護や医療の費用も減らすことが出来るでしょ。

 会のモットーは、愛すること、初めてのことに挑戦すること、耐えることの三つ。80歳を過ぎてから絵画を始める人、ボランティアに力を入れる人など、会員はいろんな分野で精力的なんだ。

 僕も88歳の時に、音楽劇の脚本を初めて書いてね。生と死をめぐる哲学をわかりやすく説いたベストセラー「葉っぱのフレディ」を読んで、劇にして子供たちに見せてあげたい、と思ったのがきっかけだった。学生時代以来、本当に久しぶりに舞台に上がり、ひげの老哲学者を演じたんだ。

 それと、新老人には、日本の良い文化や生活習慣、戦争体験を次世代の子どもに伝えてほしいよね。いのちや平和の大切さを教えるのは大事な使命でしょ。

 野球でいうと人生は九回裏に逆転すればいい。終わりよければすべてよし、と言うでしょ。

 年を取るにつれて、人生がクレッシェンド(音楽用語で「次第に強く」)になってきた。まだまだやりたいことがたくさんあるんです。私の予定表は10年先まで埋まっているの。(敬称略)

ひのはら・しげあき 95歳
聖路加国際病院内科医長、院長を経て、1996年から理事長。旧厚生省医師研修審議会会長、国際内科学会会長などを歴任。現在、聖路加看護学園理事長、財団法人ライフ・プランニング・センター理事長、日本音楽療法学会理事長などを務める。2005年、文化勲章受章。

(2011年10月4日 読売新聞)


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