世渡りしているわけだが、まあ、そのことはおいといて。
このたびは念願の「ねこ」をようやく手にした。

向かって右側の青いのは裏側。
左側の、丈が短いのは表側。
このあたりで畑に出ている女性は、
寒くなるとみんなこれを着ている。
中には綿が入っていて、背中と腰を温めてくれる。
袖も襟もない、背中だけの半纏なのだが、
動きやすくて後ろが温かいから、野良では
ほんとに便利!
あれいいなあ、と思っていたら、章子さんが
プレゼントしてくれた。彼女が長く介護して
いたお姑さんの遺品で、未使用の二枚。
「ねんねこ半纏」というのは、赤ちゃんを
おぶった上から着られるような大きめの半纏の
呼称だが、これは薄くて小さいから、呼び方も
縮まったのか、ただの「ねこ」。
発祥は信州で、ネットで見るとアマゾンでも売っていた。
よく作られている地方の名を冠して
「南木曽ねこ」とか「市田ねこ」といった名称がついている。
老ドラゴンが昨日、何時間も肉をストーブで
煮込み、絶品シチューをこしらえた。私はさっそく
ねこをかぶって……じゃなく、ねこを背負って、
りつ子さんちにお裾分けを届けに。

りつ子さんは築170年とも言われる古民家の主。
この囲炉裏で、五平餅を焼いていただいたこともある。
納屋や押し入れには、養蚕が盛んだった頃に使っていた
という機織り機、足踏みミシン、いまではめったに
見られない巨大な長持などが無造作に放り込んである。
いつ伺ってもわくわくする昭和タイムスリップ空間。
「こんな布が出てきたの。捨てちゃおうかと思ったけど
友達がもったいないって言うから」作ってみたという暖簾。
立派な鳳凰の柄。そりゃ、捨てるなんてとんでもないでしょ!。

そんなこんなで、2024年も残るは明日一日。
S村で正月を迎えるのは三度目になる。
一年目の元日はコロナ騒ぎ(その後、発症)。
二年目の元旦は能登地震の発生。
さらに、羽田空港で旅客機と海上保安庁の飛行機が衝突。
炎に包まれた旅客機を、テレビで茫然と観ていた。
三年目はどうか平和な幕開けでありますようにと、
雪と雲をかぶった神々しいアルプス山脈に手を合わせる。
