陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「鳥」

2011-02-20 | 映画───サスペンス・ホラー
1963年の映画「鳥」(原題 : The Birds)は、「ジュラシックパーク」や「ジョーズ」などモンスターパニック映画の先駆けといえるかもしれません。ただし、人間を襲うのは、そこたしに飛んでいるふつうの鳥。人に危害を加えるはずもなし、と喰ってかかったそのなじみの生き物が、獰猛な本能をあらわにするからこそ、かえって恐い。

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有閑階級のメラニー・ダニエルズが経営するバードショップに、若い弁護士ミッチ・ブレナーが訪れた。新聞王の娘でスキャンダルの多いメラニーを訴えた裁判で、相手方の弁護人だったミッチが接触を図ってきたのだった。嫌味の応酬だったが、どことなく彼に惹かれたメラニーは、こっそりミッチの暮らす湾岸沿いの小村を訪れる。つがいのインコを届けにきたメラニーだったが、帰途、とつぜん一羽のかもめに襲われる…。

怪我をしたのを契機に、村に滞在することになるメラニー。ミッチと距離を縮めるチャンスなのですが、彼には年の離れた妹キャシーと、気難しい老母がいました。さらには、大学時代の級友でいまは当地の小学校教員をしているアニーは、じつはミッチと過去に想い合った関係。
不気味なほど鳥が集いはじめ、何度となく人びとを襲いはじめる。夫を亡くして以来頼りにしてきた男友達をうしなって意気消沈する、ミッチの母。災い転じて福となすといべきか、これまで息子に近づく女を毛嫌いしてきた彼女に、メラニーは頼られる存在に。また、実の母親と不仲で母性を感じたことのないメラニーが、老母を励まし、か弱いキャシーたち子どもを守ろうとする健気さは、胸打たれます。
ミッチも一家の長として、女三人を守ろうとする逞しさがあって、好感がもてます。ただ恐怖心を煽るだけのエンターテインメントサスペンスに終わってはいません。

それにしても、鳥の攻撃のすさまじいこと、恐るべし。
メラニーと家族と共に車でミッチが脱出する最後は、トリックもなにもなく拍子抜けなのですが、危険を乗り越えて家族が支え、戦ってていく姿はほほえましいですね。
鳥の襲撃シーンは当時最先端のモンタージュ技法で別撮りしたものですが、じっさいの鳥(一部は模型もあるだろうけれど)だけあってCGにはない迫力がありますね。ヒッチコックならではの色彩美と構図のうまさが、ここにも生かされています。
鳥のモチーフと、母親と息子の葛藤というテーマは「めまい」でもありましたね。淡いブロンドの気丈な女性が襲われて倒れていくシーンは、例のシャワーシーンを思い起こします。ただし、あのそそり立つような音楽はついていないですが、あの黒々とした鴉が群れているのを見ているだけで、じゅうぶん恐い。

主演はロッド・テイラーとティッピ・ヘドレン。
原作は「レベッカ」でもおなじみ、英国の女流作家ダフネ・デュ・モーリアの同名の短編作。

(2010年3月4日)

鳥(1963) - goo 映画


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ヒッチコック映画のよう 米で千羽以上の鳥、死んで落下 - asahi.com

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