私は以前、上京する人を酷評する記事を書いたことがあります。
我ながら大人げないですが、東京暮らしマウントする知人へのあてつけではありました。
しかし、田舎から人口流出が酷いのは事実です。
私の空き家のお隣さんは、孫娘さんひとり。なのに東京で就職したので戻る気はさらさらない。広大な土地に離れもある立派な建物は、将来、廃墟と化す。今からもう手入れをすることはなく、いずれは墓じまいも…。数百年続いた地域の縁も途絶えていきます。田舎で土地を離れないのは、土着の商売か農林水産業を営む、小規模経営の事業主家族ぐらい。
私は在職しながらも、自分の市場価値を試すために、転職エージェントにも登録しています。
すると、あきらかにど田舎のハローワーク求人にはないような、優良求人が多いです。しかし、勤務地からして応募できない。給与面のだけではなく、仕事がおもしろそう。文系が興味を抱くお仕事、ましてや自立して生活ができる職種は、都会に行かないとありつけません。私のはじめての正社員職である企画編集職も、関西在住時のもので、ご当地ではそんな求人はほとんどありませんでした。
田舎では、たとえ適職に出会えたとしましても。
たちまち、家族経営、地縁に基づく取引のために、従業員の暮らしを無視した劣悪な労働環境がはびこっています。大企業に比べると2年遅れの労働時間規制。テレワークの未整備。ハンコ文化に不要な役員の会議の無駄。
ときおり、自然豊かな山奥にサテライトオフィスを置くIT企業があったりもします。しかし、原則、自動車がないと通えないような不便な場所。学卒後、すぐに奨学金返済を背負ってしまうような経済状況の学生さんは、とてもないですが、車すら買えません。携帯料金だけで生活費が圧迫されてしまう。
コロナ禍によって、地域を観光需要で潤すことの危険性が可視化されてしまいました。外から人を呼んで経済を回すだけでは限界がある。田舎が欲しいのは、気まぐれに遊びに来て、切り取った写真のごとく、田舎を消費してしまうひとではなくて、恒常的に田舎へ住んで経済を支えてくれる担い手です。
そのために必要なことは、田舎に多い、農林水産業という第一次産業への従事者、建設・工事もしくは医療福祉など、地域問わずに必要な業界への投資、人材育成ではないでしょうか。ほんらいは地方発の企業でありながら、本社を東京にしたために、法人税が地元に入らずにいる大企業があります。松下幸之助が理想とした、地元採用重視の全国規模の製造拠点であった工場が、続々と閉鎖もしくは、非正規労働へ転換されたため、地方では安定した職がなくなりました。
また都道府県ごとに設定される健康保険料率は、人口減少が激しく、高齢者が多く、医療費がかさむ田舎ほど、高くなっています。そのため、田舎では給与が低く、魅力的な仕事もないうえに、手取りが少ないという地獄が待っています。
かつてならば女性は扶養されるので、パート仕事でも構わないのでしたが。
ここ近年は、夫婦共働きも増え、育児や介護への出費も馬鹿になりません。しかし、人手が少ないのに、個人への負荷が大きすぎる田舎の企業では、家庭に問題が生じると、労働者は会社を辞めざるをえなくなり、家族ともども行き倒れになります。
おもしろし仕事が逆にないというのならば起業するチャンスともいえますが。
人口が目減りしていく地方では、新規出店しても撤退を繰り返すお店が多いです。ネット上で請け負うフリー仕事は、大資本の発注者がわが、後ろ盾のない個人事業主の無力さをいいことに、無理な条件をふっかけてくることが問題視されています。
新しい菅政権の、内閣発足後の人気が高まっているようですが。
くれぐれも、小泉政権時のような、国民人気をよそに労働者を苦しめる政策を乱発するようなことのないようにお願いしたいものです。地方の農家出身者であるというたたき上げ宰相に、国民が期待することは、暮らしをよくしてほしいこと、選挙対策のためだけのばら撒きは勘弁してほしいこと、働くまじめな若者が報われる世の中であってほしいということですね。