2004年の日本映画「約三十の嘘」は、六人の詐欺師が乗りあわせた特急列車のなかでくりひろげる密室サスペンス。
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大阪発札幌行きの寝台特急に乗り込んだのは、三年ぶりに集結した六人の詐欺師たち。かつてのリーダー格だった威厳のかけらすらない志方大介、姉御肌の宝田真智子、なにかと口答えの多い生意気な若造の佐々木健二、なにかと仕切りたがる久津内守、そして新参者の横山宏紀。さらに途中から乗り込んできたのは、いわくつきの女・今井優子。車中で打ち合わせをするメンバーだったが、三年前の手痛い失態を思い出し連帯感は薄い。
それでもなんとか札幌での大仕事を成功させた六人は、意気揚々と帰りの特急に乗り込む。
三年前のトラブルメーカーだったのに、可愛いからちゃっかり許されてしまう優子。新参者だと思っていたのに意外とやり手だった横山。チーフとして張り切っているわりには押しの弱い久津内。不甲斐ない志方にやるせない想いをいだく宝田と、もどかしさを募らせて裏切りをもちかけようとする佐々木。メンバーそれぞれの裏の思惑が見えてきます。
翌朝、7000万円の入ったトランクが忽然と消えてしまったものだから、六人はお互いに猜疑心を深めあってしまう結果に。監視しあう六人の関係はぎすぎすしたものに。
「オリエント急行殺人事件」と「オーシャンズ11」とを掛け合わせたノリでつくったのでしょうが、イマイチ、落としどころが掴めてないといいますか。群像劇としては俳優の存在感も極まっていているのですが、ストーリーに芯がないのですよね。よくできているんですけれど、最後になにかひねりが欲しかったといいますか。真犯人が誰かといえば、全員が全員犯人ともいえるのでは。登場人物が限られているので、嘘をたらい回しにしていく展開が読めないこともないですね。サスペンスとして期待すればやや弱い。
詐欺師なのにどうやって金をせしめてきたのかを説明する部分がないし、これなら別に詐欺師にする必然性がないような。そもそも信頼なんてものが成り立たない商売の連中が騙しあったとしても、おもしろみもなにもないのですよね。内輪もめだけして仲直りして勝手におやりなさいな、としか思えない。そのお金がマフィアのものだとか出どころの汚いものだったとしたら同情も湧くのですが。これを仕事といって連帯感を強められても感動は降りてこないです。
監督は大谷健太郎。
出演は椎名桔平、中谷美紀、妻夫木聡、田辺誠一、八嶋智人。
(2011年6月16日)
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