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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

我が家の歴史、博物館へ寄贈しました(後)

2018-09-05 | 芸術・文化・科学・歴史

最近、ある水族館が経営難で閉館したものの、イルカなどの展示動物の受け入れ先が見つからないとのニュースを見ました。まさか、戦時中の象やトラなどの安楽死のような真似はしないと思うものの、不安がよぎる話ですね。日本は災害大国なのに、世界有数のミュージアム大国でもあったりする。自治体の文化予算も限られていますので、今後、管理費用のかさむ博物品の収容は控えめになるかもしれません。

我が家の逸品珍品のうち、寄贈適ったのは、意外や意外の品々。
装丁がなかなか古めかしい薬袋(中身が未開封)、着火するタイプの懐炉、戦前発行された大量の絵はがき、物差しなど。1960年代の地図や婦人雑誌は、今後予定の昭和のある時期の展示企画に入り用とのこと。正直、こうした紙類や小物は捨てやすいので残っていないことが多く、かえって貴重品になるとのこと。うちも断捨離でかなり処分しましたね。紙は虫食いがひどくて汚かったので。もっと保管しておけばよかったのかもしれません。

それにしても、これも、あれもと頂く予定だったジェイソン氏。
そのうち、博物館の収容スペースの限界が気になりだしたのか、最終的に引き取る数をやや削減。けっきょくミカン箱ひとつ程度に。もうちょっと目ぼしいものがあったかとの期待を裏切ったようで、こちらとしても申し訳ない限り。寄贈点数が意外にも200点近くだったにせよ、その大半100点以上は絵はがきでした。

後日、寄贈資料一覧と、資料寄贈申込書とが郵送され、署名押印して返送で、寄贈手続きが終了。正直、大掛かりな品を運び出すためにあれやこれやと用意したルートも不要に。

引き取り手がないままの木製や鉄製の農具の一部は、廃品回収業者に渡すことになりました。遊山箱とか、持ち運び式のミシンとかけっこう美品に見えたけど。「金色夜叉」の貫一がお宮を蹴り飛ばすときのあのインパネスのマントみたいなの含め、着物も大量にありますね。自分で仕立てていたのか、布切れも。染みやカビになっていますが、聖骸布どころか、畳まれ具合でミッフィーちゃんが浮き上がっているのがおかしい。

古い家電も捨てる予定ですが、最近は自治体のリサイクル料金が厳密になっていますよね。二束三文でも古道具屋さんで引き取ってもらえたら嬉しいけれど、大型ミシンとか櫓箪笥とか動かせないものはどうしようもないですね。

博物館への寄贈品は、寄託ではないので、完全に所有権が移転します。
受贈者がひきつづき使用するものではないので、保管に危険性がない限りは、法律上、贈与にかかわる規定で制限されるわけではない。瑕疵担保責任もない。しかし、なんでもかんでも、ゴミみたいなものを押し付けても迷惑に感じられそうですね。博物館のデータベース上は寄贈者の名が残りますが、展示の際は「個人蔵」とのみ掲載される模様。私ではなくて、せめて先代のうちに寄贈しておけばよかったのだけど、と思わないでもない。いままで無造作に廃棄したもののなかにも、寄贈できたものがあったのかもしれませんけれど、保管場所の確保が…。

いま、将来価値が出ると思って保管しているヲタクグッズなんかも、あんがい、同じことを考える人が多くてさほど価値があがらないのかもしれませんよね。
古いドラマに出てきそうな車や家電の広告パンフなんかもありました。断捨離でいちばん驚いたというか、処分が厄介だったのは、納屋の奥に埋もれていた自転車と、自家用車1台(驚)。知り合いの車販売業者を呼んで、廃車手続きを行い、もうかなり古いのですが鉄くずにはなるらしく、レッカー車での引き取り料と買取料とが相殺でした。

余談ですが、珍しいと思った資料は、現役の博物館学芸員や鑑定家など信頼のおける専門家に見せるまでは、なるべく秘しておいたほうがいいかもしれません。
私は高校時代、夏休みの自由研究で某寺院の展示をテーマにしたことがありまして。そのとき、お寺の職員から好意で譲っていただい古写真を課題ノートとともに提出したら、その写真だけ女教師から返却されなかったことがあります。こちらが返却を要請したのですが、無視されました。この教師が、先述ののちに学芸員に転身した方ですが、すでに退職中の身であるのが幸い。研究者などに資料を預ける場合は、資料を個人で溜め込んだまま公開しない恐れもあるので、どのように活用するかを訊ね、寄贈資料の一覧などを作成してもらうといいですね。今回の学芸係長氏の対応には誠実さがありましたので、うちの寄贈資料もそれなりに管理してもらえそうです。

ともあれ、断捨離をすすめている皆さん。
家の中にちょっと昭和チックな、もしくは大正や明治、さらには江戸期のものまで見つかった場合はとりあえず一時保管して、地元の博物館に連絡してみたほうがよさそうです。日用品の来歴などは、お年寄りがまだ存命中に聞き取りしておいたほうがよさそう。あと、写真は日付、写ったひと、場所などを裏に記名しておいたほうがいいですね。存命中のひとでも若い頃の顔と変わっていますし、代が変われば、ほとんど顔合わせしたことがないおじ、おばですら誰かわからなくなります。

歴史はいま、わたしたちの何気ない暮らしからもつくられていく。
断捨離ライフで続々と出てきた我が家の古めかしい珍品のごく一部ですが、生活の歴史展示でお役に立つなら幸いです。役立たずでその後、こっそり廃棄されているのかもしれないけれど(笑)。


我が家の歴史、博物館へ寄贈しました(前)
歴史はいま、わたしたちの何気ない暮らしからもつくられていく。断捨離ライフで続々と出てきた我が家の古めかしい珍品のごく一部を、地元の県立博物館へと寄贈してみました。生活の歴史展示でお役に立つなら幸いです。



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不器用だから、片付けられない。そんな自分でも、ちょっとずつ。2012年ごろから手掛けている実家、我が家の断捨離の記録です。めざせ、シンプル・イズ・ベストなミニマルライフ。

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