少し考えます。連載の内容を変えるかもしれません。
さて、cです。
かつては、Creating Drama Factory(以降C.D.F.)、YOU企画が8年間連続してやっているワークショップで、発表会を目指して即興劇を一本創るというものをしょうかいしていました。
この企画自体は、アウトリーチもやっていこうとYOU企画を始めた時に決めていて、自分が楽しんだ演劇を多くの人に手軽に楽しんでもらおう、とプロデューサー的感覚で始めたものです。
でも、これも少なからず演出家としての僕に影響を与えていますし、重要な創作の糧になりました。
まず始めにC.D.F.の手法について解説しておきます。
ドラマが生まれそうな場所、会話が生まれそうな場所を設定し、そこに出てくる登場人物を考え、その人物たちの出入りの順番を適当に決めます。
そして後は即興・アドリブで創って行きます。
アシスタントの書いた日誌を見返していくと、「そこに入る目的、そこから出る目的」を持つことがポイントになるようです。
そして話の中での大きな目的と。
これは、戯曲を読み解く時に用いる手法でもあります。
そのシーンごとの役の目的や、物語全体を通しての役の目的、そして人生におけるその役の人物の目的を探ります。
C.D.F.で様子が違うのは、基本的にその人自身として舞台上に居てもらい、反応してもらう、ということです。
ここに、C.D.F.2005に参加した24歳の大学院生の言葉を丸ごと引用します。
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10回という限られた時間のなかで、初めて出会った人たちと共に物語の空間をつくりあげていくCDF。普段は演劇とは別の世界で生きている私には新鮮でした。
「YOU」企画という名前のとおり、私/あなたという境界をふと考えさせられました。自分であり自分でない私はどんな人なのか?
例えば深夜のコンビニというある日常の場面において、つい説教してしまうサラリーマンという役柄を私はつくっていきました。周りの関係の中からどんどん私が決まっていく、それは不思議な感覚です。
(2005年のC.D.F.については、HPのアーカイブへ)
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「初めて出会った人たちと共に物語の空間をつくりあげていく」という、これがC.D.F.の肝です。
これは、「そこに居る」ということができないと実は成立しない事柄です。
夜のコンビニにまず居ること。そしてその中でその場所に詳しい(内)か、詳しくない(外)か、あるいはその中間かという役割だけ決めて、その他は自分としていてもらいます。
店員とお客では、空間での居心地というか、立ち居振る舞い、ずばり「そこに居る」その存在の仕方が異なります。また、中間である出入り業者や見回りの警察官などもそうです。コンビニに関する情報量の過多がお話が面白くなるか、観客に情報が共有されるかの鍵になりますが、実際にお芝居として重要なのは、その存在の仕方だと思います。
その上で上記の目的を決めます。
何かを探しているとか、万引きをするとか、店長と世間話をするとか。
その場から出る理由も、トイレに行くとか、財布を忘れたとか。
さらに、リストラされた、とか親が家出しているとか、そういう背景が他の人が言った何気ないセリフから決まったりします。
あるいは、自分から創っていったりもします。
これが、「周りの関係の中からどんどん私が決まっていく」ということだと思います。
「つい説教をしてしまう」役柄は、普段から理屈っぽい物言いをしていて、ついた部分もあるかもしれませんし、
わざと普段言いたくてもいえないことを言ったのかもしれません。
いずれにせよ、普段の自分というものが結構大きく出ることになります。
こうして何回も、普通の人たちが舞台上で別人としてその人自身のの輝きを発する場面をみて感動してきました。
そのせいで、僕自身が創作していくときは、基本的にはその俳優自身が輝くようにしたいな、と思うのです。
だから、最初はエチュードから見て行きます。その俳優さんの人となり、舞台上でどんな振る舞いをするのかを見たいのです。
また、物理的に変える、ということをするときのために、しぐさや姿勢などもみて、スケッチしていきます。
そして作品のミザンセーヌの中に取り入れたり、演出上の“負荷”に使ったりするのです。
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