《以下引用》
「政府は26日、ローレス米国防副次官が在日米軍再編に要する経費の日本負担が約3兆円に上ると明言したことで、巨額負担に国内世論が反発しかねないと戸惑いを見せている。(中略)政府は、この時期に日本負担が高額になることをあえて強調した同発言について米国内の世論、議会対策の狙いがあると分析。小泉純一郎首相も同日夕「(米国が)これだけ日本の防衛に責任を持っているのに、日本の負担が軽すぎるという米国の世論に配慮しているのだろう」と記者団に強調した」(4月26日『共同通信』)《引用ここまで》
沖縄海兵隊のグアム移転費用の見積もりが6900億円である。それがなぜ3兆円に膨らむのか? 2兆3100億円という膨らんだ数字は、普天間基地の辺野古への移設を含めた国内での基地再編費用なのだ、という。
3兆円といえば、国民ひとりあたりに換算すればおよそ2万3千円の負担である。
在日米軍の再編がどうなっているかといえば、アメリカ陸軍第1軍団司令部を改編した統合作戦司令部のキャンプ座間への移転、厚木基地の空母艦載機部隊の岩国基地移転、それに普天間基地の空中給油機部隊の岩国基地移転などである。そして負担の中身とは、移転に伴う家族住宅や関連施設の整備費を指す。アメリカが負担するのはかなり安く、4600億円である。
果たして国民的合意が得られるのか? 答えはどう考えてもノーだろう。
ローレス国防副次官は「移転は日本側の事情によって行われる」と強調する。確かに町のど真ん中にある普天間基地の移転は日本側の事情による。しかしもともとは、沖縄戦に勝ったアメリカが勝手に接収した土地である。(いまは個々の地主に地代を払う代価として基地として使用しているにしても、である)。
第2には、日米同盟が大事だとはいえ、アメリカは沖縄始め日本に基地を置くことで、アメリカ自身の「利益」にも大いにつながっているはずである。日本を防衛するため、とは常套句だが、惑わされてはならない。アメリカの国益にも大いに役立っているのだ。
外国の基地を置くことはやむを得ない、と例え考えたとしても、恩着せがましくいわれる筋合いはないのではないか。むしろ日本の国益を元に、アメリカとは堂々と論議し、国民に対しては説明責任をきちんと果たしていく、という道筋をはっきりさせることのほうが大事なのは当然のことだ。
このアメリカ軍の再編問題をめぐっては、日本と同じようにアメリカ軍基地を置いているドイツや韓国の対応と比べてみると、日本がいかにアメリカのいいなりになっているかということがよくわかる。
ドイツにしても韓国にしても、基地再編は縮小を前提にアメリカと協議し、大体そういう方向で再編が進んでいるからだ。根底にある考えは、ドイツの場合、〈テロとの戦争〉で見せたアメリカの一国主義的な考え方とは一線を画したいという思惑がある。韓国の場合は、異国の軍隊がいること自体、民族的な矜持心が許さない、という考えがあるからだ。
それに比べ、日本はどうだろう。自国の防衛にしても、日米同盟にしても、国民的な議論を表面化させないままきた。しかしもっと驚くことは、この在日米軍再編問題でも露呈したが、これから日本は、アジアの中で国際社会の中で、安全保障や外交に対してどのような戦略を持って生きていこうとしているのか、それがないことである。
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