Re-Set by yoshioka ko

■強度偽装事件が映し出すニッポン人のこころ

 「責任のたらい回しにあきれ、がっかりした」
 「命の危険と隣り合わせでいることの意味を全く分かっていない」
 証人喚問を聞いたマンション住民の声だ。この滲み出るような悔しさと怒りから、この事件の裁きは出発しなければならない、と思う。

 耐震強度偽装問題で昨日、衆議院国土交通委員会に証人として喚問された姉歯秀次元建築士、篠塚明木村建設元東京支店長、木村盛好木村建設社長、内河健総合経営研究所所長の4人の証言で分かったことは、生き残りを図るためにコスト削減に走る建設業界の姿だった。
 「応じないと、生活ができなくなってしまうため、やむを得なかった」(姉歯元建築士)
 「コスト削減はどの業者にもお願いすることだ。プレッシャーとは思っていなかった」(篠塚元東京支店長)
 「東京支店のことは知らない」(木村社長)
 「姉歯氏とは名刺の交換もしていない」(内河所長)

 事件の解明を図るための証人喚問ではあるが、4人の口を吐いて出てくる言葉は、夢からいきなりどん底に落とされた人々が、今どのような思いでいるのかを想像することすらできないのか、ひたすら自己弁護だ。

 テレビが中継する証人喚問の様子を見ながら、もうひとつ私が感じたことがある。それは彼ら4人を追求する各党の議員たちのことだ。証人喚問というといつもそうなのだが、議員たちの質問が長すぎるし、いったい何を聞きたいのか要領を得ない。ことに今回はトップバッターとなった自民党議員はひどすぎた。
 それにしても、なぜ彼らはいつもこんなに居丈高なのか。

 国民に選ばれた代表だ、という意識がもたげるからなのだろうか。それにテレビの生中継ということもある。その証拠に、質問者は地元の有権者にこの姿を見せたい、という気持ちが働くのだろう、わざわざ自分の地元の名前をあげて、このようなことが起きて地元でも不安を感じている、などともおっしゃる。

 証人喚問された4人は悪い人に決まっているのだから、言いたい放題といった気分でもある。警察や検察の捜査は捜査として今後あるのだろうけれども、証人に向かって、国会議員として国民の疑惑を払拭しなければならない、何ごとも包み隠さず、真実を述べていただきたい、ウソをいったら罰せられる、などとと(高飛車に)言う姿を見ていると、それはそうだけどもさぁ、という気分にさせられてしまう。

 そういう気分にさせられたあとに、私は思い当たった。
 国会議員の先生たちは国民の疑惑を晴らすためにも、などといっているが、いま証人を前に先生たちが最も心を砕かなければならないことは、耐震強度の偽装があったとは全く知らずに、やっと手に入れたマンションが、実は震度5が来ただけでも危ないとされた住宅に、現に住んでいる人たちの気持ちに立つことではないか。やっぱり先生たちも、そこを忘れている、ということだった。つまり、残念ながら、人ごと・・・。

 証人に向かって疑惑を追求する国会議員の先生だって、西村真悟先生(弁護士法違反及び組織犯罪処罰法違反)、五島正規先生(公職選挙法違反に関する連座制)を思い出すまでもなく、いつ証人喚問されてもおかしくないことをなさっている。
 学校の先生だって、生徒へのわいせつ行為や体罰で、今年だけでも588人が懲戒免職になった。
 家電メーカー大手の松下電器だって、再び起きた自社製欠陥ヒーターによる死亡事故にあわてたのか、テレビをつければ、回収や修理を呼びかけるCMをイヤという程流している。
 そして日々、「いじめ?で中2男子が自殺」「レコ大審査委員長 自宅全焼 本人行方不明」「鉄鋼輸出入会社 所得隠し4億円」などといった事件が起きている。
 そればかりではない。小泉首相の靖国参拝を巡っては、「踏まれた側の痛みを分かって欲しい」と中韓首脳からの注文に「戦没者への哀悼の念、精神の問題だ」と言い続ける。

 共通するものは、モラルの欠如、責任感の欠如、弱いものいじめ、認識不足などである。そしてみんなどこかおかしい、と思いながら、その原因もつかめないままいまがある。
 バブルがもたらしたのか、その崩壊がもたらしたのか、冷戦の産物なのか、その崩壊の産物なのか。あるいはバブルが終わり冷戦が終わったあとやってきた「不毛の時代」が生み出したものなのか。もっと前に戻って考えれば、戦後の日本のありようそのものに、欠陥があったのかも知れない。
 家庭、会社、学校、業界、自治体、省庁、国会、国・・・。あらゆる場所でほころびが拡大しているように私には思える。

 「責任のたらい回しにあきれ、がっかりした」
 「命の危険と隣り合わせでいることの意味を全く分かっていない」

 耐震強度偽造マンションに暮らす人たちの滲み出るようなこの言葉の意味を、いまあらためてニッポンという場所に置き換えて考えてみる必要があるのではないだろうか。

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