ひとことでいえば、消費者の食に対する安全性や新鮮さを重視する意識の高まりから生まれた発想で、これは、フードマイレージという言葉で表現される。
もともとはイギリスで始まった考え方で、食材や食品が消費者に届くまでに、どれだけの輸送エネルギーを使ったのかを、食材や食品の輸送(輸入)量(トン)に運搬距離(Km)を掛けた数字で表す。
たとえば北海道産ジャガイモ10Kgを、東京で購入して食べる場合、10Kg ×1600Km(札幌~東京間の距離) =10.6トン・Kmという数字になり、この10.6トン・Kmがフードマイレージということになる。
ところが、である。もしこの北海道産ジャガイモ10Kgを、千葉県産ジャガイモ10Kgに変えて食べる場合、フードマイレージの数値はどうなるか?
10Kg ×40Km(千葉~東京間の距離)=400 [Kg・Km]となり、高い運賃を払って北海道産のものを運んだ場合と比べれば、40分の1の輸送エネルギーで済むことになる。
言葉を変えれば、地球温暖化の原因のひとつであるCO2の排出量が40分の1で済む、ということである。
私たちの街にあるスーパー、そこに並んでいるものの多くは国産のものだが、しかしよくよく見ると、大豆や小麦、トウモロコシといった穀物は別格としても、肉や魚、それに野菜までもが輸入されていることが分かる。
エネルギーベースでいえば、日本の食糧自給率はいまも40%前後のままである(穀物自給率に限ればわずか27%)。つまり6~7割は海外で生産されたものを日常的に食べているということである。
このような他力依存という現実をフードマイレージに関連づけていえば、多くを輸入農産物に頼る日本が地球環境に与えている負荷(CO2など)は、とてつもない数字になる、ということだ。
資料はちょっと古いが、農林水産省政策研究所が試算したところによると、2000年に日本が輸入した食材・食品の輸入総量は約5300万トン(その7割は穀物)。この総量に輸送距離を掛けたフードマイレージは約5000億トン・Kmとなる。これは韓国の約3.4倍、アメリカの約3.7倍に相当する、という。
温暖化防止に積極的に取り組んでいく、ということが国の方針であるならば、国の安全保障と引き替えたアメリカ産の大豆や小麦といった農産物輸入政策を、逆に国産化していくという努力ひとつが、実は環境への負荷を引き下げていくことにつながるのだ、ということに気づくべきだ、と思う。
近年、食の安全性への関心の高まりから「地産地消」という言葉がよく使われるようになった。地域の生産物を地域で消費するという意味だが、道の駅などにたくさんの人たちがやってくるのは、顔の見える生産物に、より安全と安心を感じ取るからであろう。
今日の新聞に掲載された広告の話に戻るが、〈なるべく日本でとれた物を食べるとCO2を減らせます〉とのキャッチコピーが挙げた例を、わかりやすく引用してみる。
●台湾産うなぎ(一尾)・・・空輸で出るCO2は630g。鹿児島産をトラックで運べば30g。
21分の1。
●豪州産アスパラガス(一本)・・・空輸で出るCO2は340g。長野県産をトラックで運べば1g。
340分の1。
●アメリカ産小麦(パン一斤分)・・・空輸で出るCO2は140g。北海道からトラックで運べば30g。
約5分の1。
●イタリア産小麦(パスタ一袋)・・・空輸で出るCO2は330g。北海道からトラックで運べば20g。
約17分の1。
温暖化は、北極のホッキョクグマの親子を、溶けた氷の上で飢えさせ、南極では溶けた氷がペンギン親子を危機にさらしている。こうした例を持ち出すまでもなく、「地産地消」など地域や私たち自身の努力ひとつで、温暖化防止にも大きく貢献できる。
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