バラク・オバマ新大統領の就任式を、その近くで見た。議事堂とワシントンモニュメント、それとリンカーン記念堂を長方形に囲った一角には、正式な招待状を持った20万人を超える参加者であふれていた。一般の見物人を含めると200万人が集まったのではないかと、のちに見たテレビの司会者が言っていた。
車では近づけないということで、私はスプリングフィールドというDCから30キロほど離れた近くに宿を取り、朝9時半に出発して地下鉄で会場を目指した。始発駅にもかかわらず地下鉄車内は満員で、驚かされたことはその9割以上が黒人たちだったことだ。
家族、カップル、正装したおじいちゃんやおばあちゃん。みな晴れ晴れとした表情をしている。『だって当然でしょう、父も祖父も、その父もその祖父も、またその父もその祖父も、何代にも渡ってこの日の来るのを待っていたんだから・・・』
就任式に向かう何万という黒人たちの姿を見ながら、アメリカはこれまでになかった変化の中に突入したな、と直感した。これは対国際社会というよりも国内的にという意味だ。アメリカはこれで積年の課題といわれてきた差別とさよならし、本当の融和の時代に入るだろうと思う。
だがその一方で、多くの黒人たちがオバマ大統領誕生祝賀向かう列についていきながら思ったのは、白人至上主義者たちもこの日をきっかけに密室会議に入るだろう、という悪い予感だった。
オバマ大統領の前途には、金融危機を生みだしたアメリカ型市場原理主義への反省と新たな雇用創出といった経済問題、イラク戦争の軌道修正と悪名高かったグアンタナモ収容所の閉鎖、それにアフガニスタン戦争へのかかわりに対する正しい認識、さらには北朝鮮の核やロシアの単独行動主義への対応など、かなりの課題が山積している。
変化の兆しは確かに見えるものの、試されるのは明日から始まる一つ一つの課題に対するオバマ大統領の政治的決定能力だ。
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