インターネット選挙運動の解禁に関する書籍が、書店の本棚に並ぶようになった。
そのうちの4冊を読んだので、紹介を兼ねて若干の感想を述べてみたい。以下の順番は、著者の五十音順である。
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1 飯田泰士『ネット選挙のすべて』(明石書店、2013年)
2 西田亮介『ネット選挙解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社、2013年)
3 ネット選挙研究会編『Q & A インターネット選挙 公職選挙法の一部改正』(国政情報センター、2013年)
4 三浦博史『完全解説 インターネット選挙』(国政情報センター、2013年)
このうち、1は公選法改正の内容を、総務省ガイドラインやインターネットを利用した選挙運動の解禁に関する各党協議会のガイドラインに掲載されていないような具体的事例に則して解説すると同時に、インターネット選挙運動ではどのような有権者をターゲットとすべきか等を政治学者の論考も参考にしながら考察・解説している。後半部は、候補者や候補者を擁立したいと思っているNPO等が読者として念頭に置かれているようだ。
2は、そもそも日本の政治をよくするにはインターネットをどのように政治に利用すべきかという骨太の内容からなる一冊である。今回の公職選挙法改正は、その点の議論を欠くために「理念なき公選法改正」として批判されている。アメリカ、韓国の事例の紹介も詳しいが、単なる紹介にとどまらず批判的な視点を堅持している。
私自身、若い頃には公選法は抜本的に改正すべきだと思っていた。しかし、公選法の条文とその解釈を読めば読むほど、それに膨大なリソースが必要であることが分かってきて、トーンダウン気味である。著者の西田さんには一度だけお会いしたことがあるが、若い世代の研究者からの批判に我々もきちんと応えていかなければなるまい、という意を強くした。
3は、『公職選挙法に基づくインターネット選挙要覧』(国政情報センター、2012年)を出しているネット選挙研究会によるもので、165問のQ & A形式になっている。候補者や政党関係者、秘書などが読者として念頭に置かれているようで、選挙公営の対象を拡大すべきではないかとか、期日後の挨拶行為に関して文書図画の配布は禁じられているのにインターネットを利用する方法だけが解禁されたのは整合性がとれないのではないか等、実務者側からみた質問が多く、それに対する回答内容も立法者の視線を反映していると思われるものが多い。
4は、「改正法の解説から実践的な活用方法まで」と表紙に記載はされているものの、実質的には後者に重点が置かれている。選挙プランナーとして高名な著者だけに、これからの選挙運動がどうなっていくのかに関して示唆に富む予測が述べられているが、本書のポイントはどうすればネット選挙運動を効果的に使うことができるのか、そして最終的には当選に結びつけることができるのかという点に関するアドバイスであろう。
なお、情報ネットワーク法学会編で、インターネット選挙運動解禁に関する解説が近日中に商事法務から出版される予定である。
これまでのネット選挙運動解禁に関する議論の経緯、そもそもなぜ選挙運動は規制されているのかを含めた公選法改正内容の解説、韓国における誹謗中傷の取締りの基準、プロバイダ責任制限法に基づく具体的な削除要請の手続、公選法改正と個人情報保護の関係、未成年者の選挙運動禁止に関する法的問題点などが網羅される予定で、ご期待いただきたい。
そのうちの4冊を読んだので、紹介を兼ねて若干の感想を述べてみたい。以下の順番は、著者の五十音順である。
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1 飯田泰士『ネット選挙のすべて』(明石書店、2013年)
2 西田亮介『ネット選挙解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社、2013年)
3 ネット選挙研究会編『Q & A インターネット選挙 公職選挙法の一部改正』(国政情報センター、2013年)
4 三浦博史『完全解説 インターネット選挙』(国政情報センター、2013年)
このうち、1は公選法改正の内容を、総務省ガイドラインやインターネットを利用した選挙運動の解禁に関する各党協議会のガイドラインに掲載されていないような具体的事例に則して解説すると同時に、インターネット選挙運動ではどのような有権者をターゲットとすべきか等を政治学者の論考も参考にしながら考察・解説している。後半部は、候補者や候補者を擁立したいと思っているNPO等が読者として念頭に置かれているようだ。
2は、そもそも日本の政治をよくするにはインターネットをどのように政治に利用すべきかという骨太の内容からなる一冊である。今回の公職選挙法改正は、その点の議論を欠くために「理念なき公選法改正」として批判されている。アメリカ、韓国の事例の紹介も詳しいが、単なる紹介にとどまらず批判的な視点を堅持している。
私自身、若い頃には公選法は抜本的に改正すべきだと思っていた。しかし、公選法の条文とその解釈を読めば読むほど、それに膨大なリソースが必要であることが分かってきて、トーンダウン気味である。著者の西田さんには一度だけお会いしたことがあるが、若い世代の研究者からの批判に我々もきちんと応えていかなければなるまい、という意を強くした。
3は、『公職選挙法に基づくインターネット選挙要覧』(国政情報センター、2012年)を出しているネット選挙研究会によるもので、165問のQ & A形式になっている。候補者や政党関係者、秘書などが読者として念頭に置かれているようで、選挙公営の対象を拡大すべきではないかとか、期日後の挨拶行為に関して文書図画の配布は禁じられているのにインターネットを利用する方法だけが解禁されたのは整合性がとれないのではないか等、実務者側からみた質問が多く、それに対する回答内容も立法者の視線を反映していると思われるものが多い。
4は、「改正法の解説から実践的な活用方法まで」と表紙に記載はされているものの、実質的には後者に重点が置かれている。選挙プランナーとして高名な著者だけに、これからの選挙運動がどうなっていくのかに関して示唆に富む予測が述べられているが、本書のポイントはどうすればネット選挙運動を効果的に使うことができるのか、そして最終的には当選に結びつけることができるのかという点に関するアドバイスであろう。
なお、情報ネットワーク法学会編で、インターネット選挙運動解禁に関する解説が近日中に商事法務から出版される予定である。
これまでのネット選挙運動解禁に関する議論の経緯、そもそもなぜ選挙運動は規制されているのかを含めた公選法改正内容の解説、韓国における誹謗中傷の取締りの基準、プロバイダ責任制限法に基づく具体的な削除要請の手続、公選法改正と個人情報保護の関係、未成年者の選挙運動禁止に関する法的問題点などが網羅される予定で、ご期待いただきたい。
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