良く悪くも東京一極集中というのがこの国の姿であるから、東京の大学で起こっていることはやがて九州の大学にも波及してくると思って、ほぼ間違いない。ここでほぼという留保を付けたのは、東京と九州とでは経済力に差があるから、九州では東京並みには金はかけない(かけられない)という事情を割り引く必要があるからである。しかし、基本的な方向が全く相反するということはまず起こりえないであろう。
さて、このところの何回かの東京出張で感じた首都圏私立大学のトレンド3つ。
(1)都心回帰
80年代、政令指定都市では大規模立地が規制されたことがあって、首都圏の私立大学は続々と周辺衛星都市に新キャンパスを建設した。しかし、結果論になるがすべて失敗だったと言ってよい。郊外移転時に理想とされたアメリカ型の「学園都市」は、ついに成立しなかった。日本とアメリカとでは、大学というもののありようが大きく異なる。郊外の「学園都市」というものは、日本では成り立たない。日本の大学生と教員には、パチンコも居酒屋も必要なのである。
かくして、首都圏私大は都心回帰ぶりが目立っている。中央大学が元・アジア経済研究所のビルを購入し、後楽園の理工学部キャンパスを再開発中、青山学院大学は厚木キャンパスから撤退して相模原キャンパスに移転、立教大学は武蔵野新座キャンパスへの移転を事実上凍結という具合である。
(2)タワー化
都心に回帰するのはよいが、もともと狭溢な都心のキャンパスであるから、そのままでは学生や教職員を収容できない。そこで起こったのが校舎の高層化である。
工学院大学の新宿キャンパスあたりが高層化の趨りだったように思うが、本格化したのは、この数年であろう。法政大学の
ボワソナード・タワー、明治大学の
リバティ・タワーを「二大巨塔」として、東洋大学白山キャンパスの
2号館、青山学院大学の
ガウチャー・メモリアル・ホールなど、続々とタワー型校舎が誕生している。
(3)エスカレーター
高層型校舎では、階段だけでは上下階の間を移動することができない。エレベーターが必要になる。しかし、エレベーターというものはとかく待ち時間が長くていらいらするものである。特に語学など遅刻が許されない授業に出席しなければならない学生にとっては、上下階の移動手段をどのように確保するかは死活問題であろう。
そこでこのようなタワー型校舎にかならずといってよいほど取り付けられているのがエスカレーターである。
このエスカレーター、「エレベーターの混雑を見越して早く来なさい」と学生に言える時代ではなくなっていることを象徴している。