今日は8時半に起きて朝食を済ませたのち、午前中を妻とだらだらとテレビを観ながら、途中うとうとしたりして過ごしていました。昼食の後、妻はソフトバンクの試合をテレビ観戦をしたいというので、私は一人でお気に入りの糸島の浜辺の一つへ出かけました。
台風14号の影響か、浜辺には強い北西の風が吹ていて、押しては返す波の騒めきや、吹き付ける風の唸り声を浴びながら、玄海島や糸島の小高い山並みを眺めて、一時を過ごしました。(心が洗われました)
帰って来ると、長男から、孫2人の幼稚園の運動会の様子を様子がラインで送られてきており、2人で孫の動画を何度も繰り返し見ていました。
第三章 優子とフリオ 出会い(2001年4月)
優子は大学を出てから何度も職を変えている。最初は地元最大手の銀行。その銀行にはちょうど三年間働いた。それから四年間は、三ヶ月から長くても半年余りで地場企業を渡り歩いた。 職場に不満があったわけではない。また辞める時は大半の職場で慰留を迫られた。 しかし新しい職場について暫くすると、優子の心の中に焦燥感が芽生えてきて、だんだんと大きくなり始める。やがて、この焦燥感に耐えきれなくなって辞表を提出してしまう。この繰り返しであった。
一年半ほど前から福岡市の国際交流の促進を目的とした外郭団体で通訳兼事務員として働いていた。優子の最近の勤め先の中ではとびっきり長続きをしている。長続きをした理由は、スタッフのみんながフランクで肩肘張ったところがなかったこと、自分の得意な語学力を活かして様々な国の人々と交流の機会があったことから、居心地が良かったことと適度な刺激が得られたからかもしれない。
フリオとは、そこが主催する海外留学生と地元市民との交流会で出会った。
福岡の大学は中国、韓国、台湾といったアジア諸国からの黄色人種の留学生が大半で、白人は少ない。ましてスペインからの留学生は彼一人だった。色白で、金髪に近い髪の毛から北欧諸国かイギリスからきた留学生だと思ってみていた。英語も英語圏の留学生とほとんど変わらないくらい流暢に話している。
「ハイ、ユーコ。フリオのことだよ。顔は見かけたことあるよね。イギリス人かと思ったら、彼、スペイン人なんだって・・・・」
韓国からきた留学生のキムも優子と同じように思っていたらしい。
「ユーコを紹介してほしいそうなんで、つれてきたよ。付き合ってあげる?」
キムは魅力的な大きな目を好奇心で一杯にして優子に話しかけてきた。キムは伯父が在日韓国人で、福岡市でパチンコ店を何カ所も経営しており、幼い頃から何度も日本にきたことがある。
「彼氏はいますか。いなければボクと付き合ってください」
フリオは人なつっこい笑顔を見せて唐突に聞いてきた。スペイン人はもっと情熱的な告白をするものだと決め付けていたので、優子は拍子抜けしてしまった。少し太り気味で、身長も日本人の平均的な高さと変わらない感じだが、少しくぼんだ大きな瞳と、高すぎない整った鼻と、ブラウンとブロンドを掛け合わせたような亜麻色の肩まで掛かる長い髪が、繊細さと大らかさの両方を醸しだしていて、好感の持てるタイプではあった。キムに紹介されて、ノコノコとキムに連れられて告白に来たフリオに少しだけ失望したが、黄色人の多い福岡の留学生の中では、目立つ存在であったフリオに選ばれたことは、誇らしくもあった。
「突然そんなことを聞くもんじゃないわ。付き合ってほしいんなら、キムの力を借りないで、男なら正々堂々と独りで私の前にきて、告白してほしいわ」
「僕は独りで行くと言ったんだけど、キムが無理矢理、引っ張って来たんだ」
フリオは白い顔をピンク色に染めながら、拳を振り上げて、キムに詰るような視線を向けた。
優子はフリオのまるで中学生が初恋の女性に告白をするときのような、オドオドとして初々しい仕草に胸の高鳴りを覚えた。
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