「ちいさいモモちゃん」は、子供の頃に一番好きな本でした。
作者の松谷みよ子先生のご家庭を描いたお話。
可愛いお人形の表紙も、柔らかいタッチの挿絵も大好きでしたが、やはりお話が面白くて、取り憑かれたように毎日毎日読んでいました。
黒猫のプーとお話出来ることや、熊さんが作るシチューが美味しそうで木のスプーンが欲しかったこと、靴下のタッタちゃんとタァタちゃんなどなど、ファンタジーと現実の境目にいるような感覚で心地良かったのです。
中には、民話を元にした怖いお話もありました。
ある日モモちゃんが牛鬼に影を舐められて、目覚めなくなってしまいます。
ママはエプロン姿で、朝食の目玉焼きとキャベツの乗ったお皿を持ったまま、牛鬼を追いかけます。
方々を彷徨った挙句、見事かの牛鬼を見つけ、お尻をペンペンしてモモちゃんの影を取り戻すのです。
そして「牛は草食なんだから、草に塩をかけて食べなさい!」と、ポケットにあった塩の瓶を渡します。
他には、子供の頃はホラーだと思っていましたが、夫婦の崩壊を暗示する「パパの靴だけが帰ってくる」お話。
児童文学で離婚を描くのは、かなり珍しかったことと思います。
会社で働くお母さんすら、描かれることはあまりなかったんじゃないかしら?
シリーズは全6冊。
・ちいさいモモちゃん
・モモちゃんとプー
・モモちゃんとアカネちゃん
・ちいさいアカネちゃん
・アカネちゃんとお客さんのパパ
・アカネちゃんのなみだの海
一作目が1964年発行、六作目が1992年発行なので、完結まで30年!
最終巻の「アカネちゃんとなみだの海」は、モモちゃんシリーズが50周年を迎え、更にその一年後に松谷みよ子先生の訃報を知ってから読みました。
40代になっても、子供の頃のような読み方が出来て嬉しかったのと同時に、子供がいる親の立場ではどんなふうに感じるのかな?と想像を巡らせました。
それは想像でしかないのですが。
松谷先生のエッセイの中で語られる亡きご主人とのお話と合わせて読むと、帯の文言の通り「実に切ない」ことです。
今日はちょっと真面目!
サンキューテルヨ!
サンキューパセリ!
小説・捨てていく話 松谷 みよ子 筑摩書房