満足に研究すら、校舎の中では出来ないということなのか。
「いろいろ風当たりも強いのではないか?」
つい、聞いてしまった。
自分はひとりでいる事はいいと思っているのだが、
彼はそうでないように見えて。
彼は困ったような表情を見せる。
「難しいです、大きな組織というのは。」
ただ自分は、好きな研究を、自分の思うままにやりたいと
思うだけなのに。
なかなか、そうはいかない。
古風な学校ならではのことなのか。
「場所がないなら、私のトコロへ来るといい。
じきに卒業だからな。」
つい、言ってしまった。
はじめは、関わらない方がいいか、とも思ってもいたが、
制御する前に言葉が出た。
卒業生は受講講義はほとんどない。
たいてい卒業論文の為の研究が主で、これが終わってしまえば、
あとは学校に来ることもあまりない。
嬉しい誘いではあったが、この好意に甘えていいのか、
とまどう。
「迷惑じゃないんですか?」
これまでの経験からか、まわりに無理やり一線をひこうとする。
自分は、他人とは一定の距離をおいた方がいいのだと、
変にあたまを働かす。
「君が遠慮する必要はない。
何故って私はこの学校で一番賢い男だからさ。」
これを聞いて、さすがのホームズも驚いた。
学校内で一番の位置にいる人だったとは。
ならば、卒研なんて、ホントにすぐ終わるだろう。
それに、教養の差を意識する必要はない。