何十年経っても ひとつひとつのかけらを拾い集めても 透明にはなれないガラスの破片。
寄せては返す波のように繰り返し 時折 ふとしたことから溢れだすガラスのカケラ。
小さなガラスは もっと丸く透明になりたくて 何十年も ただ水面に揺らめき削られてゆくのを待っていた。
ずっと大好きだったのに「大好き」だと言えなかった。
感謝していたはずなのに照れくささが勝って「ありがとう」すら言えなかった。
そんな尖ったガラスの破片だった子供は もう十分な大人になり 娘を産み 今
美しく輝いていたガラス玉の貴女の歳月に近づいているのに 想いのカケラをまだまだ拾いきれないでいた。。。
今日の空の美しさや この小さな欠片の1日を 今なら沢山きちんと言葉にして話せることすら伝えたかった。
他愛ない全部 全てを この世界にいない貴女に この目を通して見せたいものがいくつもあった。 一目でいいから 逢いたい。逢わせたかった 。
最後に握った手の温もりやふんわりとした優しい手のひらの柔らかさを もう一度確かめたかった。 覚えているその感触を。
ガラスのように硬く冷たくなった貴女を 凍りついた声を 今なら温め溶かせる気がして。。。
26年分の波が一気に押し寄せ ガラスのパズルが痛いほど胸に突き刺さり こうして今 ココに溢れ出す。。。
「ありがとう・・・」 「本当は・・・ 全部好きだったんだ・・・」
天と地を結ぶこの場所に佇み 曇りガラスの小さなカケラは 今日も透明になれる日を待っている。