シニア世代の「年収の壁」と「在職老齢年金制度」の改革
近年、
少子高齢化が
進行する中で、
65歳以上の
高齢者が
社会において
ますます
重要な役割を
担うように
なっている。
特に、
シニア世代が
働き続ける
ことにより、
労働力不足を
補い、
経済の維持にも
貢献することが
求められている。
しかし、
高齢者が働きながら
年金を受け取る場合、
いくつかの障害が
存在する。
その中でも、
特に重要なのが
「年収の壁」
と呼ばれる問題
である。
この壁は、
一定の収入を
超えることで
年金が減額される、
という制度的な
問題であり、
シニア世代が
働き続ける意欲を
削ぐ要因となって
いる。
この
「年収の壁」
と
その背後にある
「在職老齢年金
制度」
について
詳しく説明し、
また
その改革が
どのように
進められている
のかを考察する。
在職老齢年金制度とは?
在職老齢年金
制度は、
働きながら
年金を
受け取る
高齢者に
対して
一定の収入を
超えた場合に
年金の支給額が
減額される
という
制度である。
この制度の
目的は、
働きながらも
年金受給の
不公平を防ぎ、
過剰な支給を
避けること
にある。
しかし、
この制度が
シニア世代に
とって障害
となる理由は、
年収が増える
ことで
年金が減額
されるため、
働いても
働かなくても
収入が変わら
ない場合が多い
という点である。
これは特に、
年金受給者が
フルタイムで
働く場合に
顕著になる。
具体的には、
在職老齢年金
制度の
「適用基準」
となる月収が
設定されており、
これを超えると
年金が減額される
仕組みになって
いる。
例えば、
基準額を超えた
収入に対して
年金が一定割合で
減額され、
年収が増えても
実質的な手取りは
あまり増えない
ことになる。
こうした制度の
存在が、
シニア世代の
就業意欲を
減退させる
原因の一つと
なっている。
在職老齢年金制度の具体例
現在の制度では
適用基準額が
50万円である。
適用基準額とは、
給与がこの額を
超えれば、
年金が減額となり、
超えなければ、
減額なしで全額
受給できるライン
を指す。
以下に現在の例を
示す。
ア)給与36万円
(月額)
イ)賞与144万円
(年間)
ウ)老齢厚生年金
10万円(月額)
エ)老齢基礎年金
6万円(月額)
の場合。
*賞与144万円は、
12で割って、月額
12万円と考える。
よって、
給与は
月額で
36万円+12万円
=48万円となる。
即ち、
月収は
48万円
+10万円
+6万円
=64万円となる。
➀給与(賞与含む)
=48万円
と
➁老齢厚生年金
=10万円で
計58万円 の
人は、
基準額を超過
した分である
(58-50)万円
=8万円
の半分
(=4万円)
が支給停止と
なり、
年金から
差し引かれる。
更に、
減額分が
後になって
支給される
ことはない。
すなわち、
➀給与(賞与含む)
=48万円
+
➁老齢厚生年金
=10万円
+
③老齢基礎年金
= 6万円
合計64万円
が以下に示す
額に減る。
↓↓
➀給与
=48万円
+
➁老齢厚生年金
(=10万円)
の58万円から
適用基準額の
50万円を
引いて、
その差額である
8万円の1/2
(=4万円)
が支給停止と
なる。
つまり、
➀給与
=48万円
+
➁老齢厚生年金
=10万円
の58万円から
5万円を引いて
<58-4=
54万円>
となった金額
+
③老齢基礎年金
(=6万円)
=60万円
が、月収
となる。
これは、
働き損である。
また、
適用基準額が
62万円に引き
上げられた場合の
例を以下に示す。
ア)給与36万円
(月額)
イ)賞与144万円
(年間)
ウ)老齢厚生年金
10万円(月額)
エ)老齢基礎年金
6万円(月額)
の場合。
*賞与144万円は、
12で割って、月額
12万円と考える。
よって、
給与は
月額で
36万円+12万円
=48万円となる。
即ち、
月収は
48万円
+10万円
+6万円
=64万円となる。
➀給与(賞与含む)
=48万円
と
➁老齢厚生年金
=10万円で
計58万円 の
人は、
基準額(62万円)
を超過していない
ため、
全額受給できる。
即ち、月収は
64万円となる。
これは、働き損
ではない。
そんな中、
厚生労働省の
諮問機関、
社会保障審議会が
昨年11月25日 に
開いた
年金部会の会合で
厚労省は基準額を
50万円から
引き上げる案
を示した。
部会で、
厚労省は
基準額を
➀62万円に引き
上げ、
(満額受給の
高齢者20万人増)
➁71万円に引き
上げ、
(=同27万人増)
③制度廃止
(=同50万人増)
の3案を提示した。
とはいえ、
厚労省は
満額受給の
人数増加に
よる
年金財政の
悪化を
最小限に
したい考え
とみられ、
基準額引き上げ
に伴い、
増える年金額が
1600億円
と、3案の中でも
最も少ない
「①の62万円
への引き上げ」
を
有力視している。
一方で、
働きながら年金を
受給する65歳以上
は、
令和4年度末時点
で
約308万人いる。
このうち、
当時の
基準額47万円を
超える
減額対象者は
約50万人で、
支給停止となった
総額は
年間4500億円
であった。
それ故
基準額内に
月収を抑える
「働き控え」
が増えている。
「年収の壁」とは
「年収の壁」とは、
年収が一定額を
超えると、
税金や
社会保険料の
負担が増加する。
加えて
年金が減額される
という現象を指す。
この壁は、
特に、
103万円を超える
年収を得た場合に
影響が大きく、
これを超えると
年金受給額が減る
ことから、
「年収の壁」
と呼ばれている。
シニア世代に
とって、
年収が103万円を
超えると、
その後の
年金支給額に
大きな影響を
及ぼすため、
この基準を
超えないように
調整することが
多い。
例え、
年収が増えたと
しても、
年金の減額に
よって
実際の収入は
思ったよりも
増えない
という現実は、
高齢者にとって
大きな問題で
ある。
このため、
働く意欲が
削がれ、
また
生活に不安を
感じる
高齢者が
増えている事が
指摘されている。
これを解消する
ためには、
年金制度自体の
見直しや、
働きながら
年金を受け取る
ことに対する
インセンティブの
強化が求められる。
高齢者の就業状況と年金受給
日本では、
高齢者の就業率が
年々増加しており、
65歳以上の
就業者数も
増え続けている。
総務省の統計に
よると、
65歳以上の
就業率は、
2020年には
25.9%に達し、
特に
70歳以上での
就業率は
過去最高を記録
した。
高齢者の就業が
増加している
背景には、
年金だけでは
生活が不安定で
あること、
また
健康寿命が
延びたこと
により、
働き続ける
意欲が
高まって
いること
が、挙げられる。
しかし、
高齢者が就業を
続ける
一方で、
年金の減額
という
経済的な不安が
存在する。
年金を受給
しながら
働く高齢者が
直面する
問題として、
収入が一定額を
超えた場合に、
年金が減額
される
という
「在職老齢
年金」
という制度が
挙げられる。
この制度は、
高齢者が
フルタイムで
働く場合に
大きな影響を
与え、
年金の減額が
結果として
働く意欲を
削いでしまう
のである。
それ故、
働きながら
年金を受け取る
ことができる
環境を整える
ための改革が
求められる。
年金制度の改革と基準額の引き上げ
現在、
年金の
減額基準
となる
月収の上限が
設けられており、
その上限を
超えると
年金が減額
される。
しかし、
これに関して
基準額を
引き上げる
方向で改革が
進められて
いる。
具体的には、
年金制度に
おける
減額基準と
なる
月収が
62万円に
引き上げ
られる事が
検討されて
いる。
この改革が
実現すれば、
年金受給者が
より多くの
収入を得る
ことができ、
年金の減額を
避ける事が
できる。
このような
改革が
進められる
背景には、
高齢者の
労働市場への
参入が重要な
経済的要素
と、なっている
ことがある。
シニア世代が
働き続ける
ことが、
社会全体の
労働力を
補うだけ
でなく、
経済の安定
にも
寄与するため、
働きながら
年金を
受け取る
高齢者が
増えることが
望ましいので
ある。
高齢者の就業環境の改善
高齢者が
働きやすい
環境を
作るためには、
年金制度の
改革だけでなく、
就業環境の改善も
必要である。
特に、
パートタイム
や
アルバイトと
して働く
高齢者が
多いため、
働き方改革
や
高齢者向けの
雇用促進策が
求められる。
また、
企業側にも
高齢者の雇用を
支援するための
インセンティブを
提供することが
重要である。
例えば、
定年後の
再雇用制度を
強化する、
または
高齢者専用の
職業訓練
プログラムを
提供することが
有効な手段と
なる。
さらに、
65歳以上の
高齢者が
働き続ける
ことを
促進するため
には、
年金と就労の
両立を
支援するための
政策が必要で
ある。
例えば、
一定の収入を
得た場合でも
年金の減額を
最小限に抑える
ような柔軟な
制度設計が
求められる。
少子高齢化と今後の課題
少子高齢化が
進む中で、
今後
ますます
高齢者の
就業が
重要な課題
となる。
働く高齢者の
数が増える
ことで、
社会保障制度の
維持が可能と
なる反面、
年金制度自体の
財政的な
負担も増加する
事が予想される。
したがって、
年金制度の
持続可能性を
確保するため
には、
年金の支給額
や
減額基準
を見直し、
高齢者が
働きやすい
環境を
提供する事が
不可欠である。
結論
シニア世代の
「年収の壁」
とは、
年収が一定額を
超えることで
年金が減額される
という問題であり、
この問題を解消する
ためには、
年金制度の改革が
必要である。
基準額の引き上げ
や、
働きながら年金を
受け取る高齢者を
支援する制度改革が
進められている。
今後も
少子高齢化の
進行に伴い、
高齢者の
労働市場への
参入を支援する
政策が
求められる。
年金制度の改革
とともに、
高齢者が
安心して働ける
環境を整備する
ことが、
社会全体の
安定に
寄与する結果
となる。
<データと資料>