今までに描いたはがき絵をいろは歌に沿って紹介していくシリーズも四周目です。現代仮名遣いにない「ゐ」と「ゑ」はとばします。「を」と「ん」で始まるはがき絵もありませんので、全部で四十四作品を紹介する予定です。
四周目はお絵かきのチャットゲーム「あつまれ!おえかきの森」で「相方」なる人物と合作した投稿絵を中心に紹介していきます。いわゆる「はがき絵」として描いたものではありませんが、新たに解説文を付けて紹介していきますのでお付き合いください。
四周目の第十四回目は「し」、「ゑ」をとばして「ひ」、「も」の三つです。
『し』・・・シャボン玉
シャボン玉を描いて「遊」という字を書き添えました。水ぬるむ春のころに遊ぶところから俳句では春の季語になっています。虹色に見える色合いと、光や景色の映り込みを描くのが難しいです。文字はあえてシャボン玉を避けて包み込むように書きました。「石鹸玉」と書いてシャボン玉と読みます。
・うすうすと幾つもあげぬ石鹸玉 原 石鼎
・美しきものは疾く消えしやぼん玉 鷹羽 狩行
・しやぼん玉楕円忽ち円となる 阿波野 青畝
『ひ』・・・未央柳(ビヨウヤナギ)
ビヨウヤナギとキンシバイの違いは?などというサイトがたくさんあるくらい、この二種は似ています。私は雄蕊で見分けることができると思います。この絵のように長く伸びた雄蕊はビヨウヤナギに特有のものです。この糸のように長く伸びた雄蕊から連想して「紡ぐ」の「紡」という字を書き添えてみました。
俳句では夏の季語になっています。
・又きかれ未央柳とまた答へ 星野 立子
・咲き出でぬ未央柳のたよたよと 古市 蛇足
・彼女眉目よし未央柳をむざと折る 高浜 虚子
・目に慣れし闇にも未央柳かな 稲畑 汀子
『も』・・・木星
木星は太陽系最大の惑星です。縞模様が美しく、大赤班と呼ばれる地球3個分もある大きな渦巻きも特徴的です。
私が中学生だったころですから、今からほんの少し前、天体写真をもとに木星の絵を描いたことが何度かあります。天体のイラストを描いて、天文雑誌に投稿するためです。「ケント紙」という言葉を初めて聞き知ったころです。ケント紙は高くてなかなか買えませんでした。
木星の輪郭は円ではなく、赤道方向に膨らんだ楕円形です。この楕円を描くのに、ピン2本を紙に刺して、糸で輪を作ってその輪の中に鉛筆を入れて、糸がたるまないように注意しながら、楕円を描いたことを思い出します。楕円が描けたら紙の裏から消しゴムでこすると、ピンの穴を目立たなくできるよと教えてもらって、嬉しがってやっていました。
当時は主に鉛筆を使って、モノクロで描いていました。大赤班を上の方に描いていたと思います。反射望遠鏡で撮影した画像をもとに描いていたからでしょうか。
今はご覧のように、こんなにカラフルに描いています。大赤班は赤道より下に描いています。参考にした画像が、当時とは比べ物にならないぐらい鮮明で、とてもカラフルです。モノクロの画像なんか探しても見つかりませんでした。
「木星」は季語ではないので、他の季語と取り合わせて一句を成さねばなりません。
・木星は椎の中ゆく夜長かな 佐野 青陽人
・木星は遠くて冬がきてしまふ 森 さかえ
・木星の堕ちて這ひたる蝸牛 龍 桔花