文明と価値
第1章 文明
- 文明を考える上での理念型
文明の研究、準文明の研究と続けてきた。文明の研究の中では文明と時間ということで、主にトインビーの理論と文明との関係について考えてきた。文明の研究にはもう一人の登場人物がいた。シュペングラーである。シュペングラーについては文明と価値というテーマで後日考えてみたいとその中でいっていた。ここでは文明と価値について考えていくこととなる。
しかしシュペングラーの「西洋の没落」は翻訳が分かりにくく(おそらく翻訳も大変だったのではないか)、アラビア文化の諸問題をはじめ、日本人である私には分かりにくいことが多々あり過ぎた。このため「西洋の没落」はいったん脇に置いておいて、シュペングラーの捉え方をヒントにしながら文明と価値の問題については日本の文化問題から事例を選びながら説明していくことにする予定である。
文明と価値について考える前に、一方の概念である文明についてここで再考しておこうと思う。文明、準文明と考えてきたが、これら諸文明の考え方は文明を分類するための基準として、この一連の研究の中で提起してきたものだ。そしてこれらの概念はそれぞれウェーバーがいうところの理念型※として取り扱うことができるものであろう。理念型を考えることでそれぞれの個別の文明(文明、準文明)の姿を、理念型との対比によって、より詳細にとらえることができるようになるというわけである。
※理念型
ヴェーバーの社会科学方法論の重要な概念。理念として存在する概念であるが、観察対象の把握をそれとの近似によってとらえる。微分的な感覚の方法論的概念。
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