4 文明間における理想的な状態とは
諸文明を分類すること、諸文明の生命現象を解明すること、その目的の中で最も重要であることは諸文明を平和という条件の下に、配列することといっていい。その配列の図面の例を「準文明の研究」の中で若干説明してみたが、モラルシステムを持つ四つの文明は、おそらくは今後も覇権争いで衝突を繰り返す可能性が拭い去れそうもない。特に民主主義体制かどうかの影響もあるかとも考えた。
このためこうした事態を回避していくために、「文明」以外の多くの準文明が経済的につながりを強めていくことが必要であり、またこれら四つの文明の分立や衝突に対して大きなバランサーとなっていくことが必要なのではないか、と提案をしていた。
そうした配列図の例のひとつとして「準文明の研究」の中ではTPP(環太平洋協定)※を挙げていた。文明の分類及びその生命現象の研究はまさしく、こうした配列図をどのようにしていけばいいのか考える際に骨組みのようなものとなるだろう。それら一つ一つの準文明はパズルにおける各々一枚ずつのピースとなるからだ。
※TPP
環太平洋パートナーシップ協定は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの間で署名された経済連携協定。準文明の分類でいうとオーストラリア、カナダ、ニュージーランドが植民型準文明、同様にチリ、メキシコ、ペルーも植民型準文明、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナムが融合型準文明、日本が辺境型準文明ということになるが、ここにイギリスが加わると辺境型準文明が増えるということになる。
「準文明の研究」の中では南半球から少しずつ、多文化主義の流れが北上していると観察していた。TPPはオセアニア、北米、南米、東南アジア、極東を包括する協定であるが、将来的にはアフリカ、極西、東欧、ロシア(ユーラシア)といった他の準文明が包括されて、加わっていくことが望ましいのかもしれない。これによって分立、衝突する文明、自らのモラルシステムのみを尊重し、影響を誇示する四文明を包囲する。そのうえでそうした行動を規制していく。いわば「複合的な文明有機体」の登場のようなものを考えるのはどうであろうか。TPPプラス他の準文明連合体ということである。
文明については、ひとつ結論のようなものがでた。諸文明は自己を主張し、衝突する。このため、それ以外の準文明の集まりがそれぞれの価値を守るために協力し、文明を包囲する形をつくる。そうすることによって諸文明の行動を抑制し、平和が維持されるのではないかというのがそれである。
ここでいったん文明について考えるのはやめにして、この論文のもう一つのテーマ、価値について考えていくことにしよう。
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