独白

全くの独白

肥田よ、さらば

2018-08-22 16:22:35 | 日記

 本来あのような施設では、万が一にも逃げられないように、二重三重の策が採られているものと思っていた。
接見室があんな無防備な造りに成って居るとは意外であった。
物の遣り取り等の防止位しか念頭に無かったのであろう。
詰まりあのような部屋からの逃亡は恐らく未だ曾て無かったのであろう。
だからこそ想定されていなかったのである。
併し起きてしまったからには、今後は鉄格子の様な物の設置が進められる事に成ろう。
評論家に依れば役所と云うものは、前例があれば動くものらしいから。
そうなった暁には切っ掛けと為った者として、斯界では彼の名が歴史に残る事に成ろう。 

 肥田君、君の事はめでたく永遠に語り継がれる事に成ったよ。
之を是として、是非出頭し給え。
尤も、君の事だからフェリーにでも潜り込んで、もう四国か北海道辺りへ、行ってしまって居るかも知れないな。

 


老化の利点

2018-08-10 20:31:26 | 日記

 一週間程前に自転車で坂を下って居て転倒した。
 道の広さは十分あるが、曲がりくねっていて見通しは利かない。併しよく通る道であり、いつも通りに走って居た。急な左カーブの手前である。反対車線を上がって来るダンプの頭が、続いて腹が見えて来るが、別に警戒する事も無く、体を傾け曲がろうとするが随分近く見える。普通にブレーキを掛けたが近付き方が速く、突っ込みそうな気がして強くレバーを握ると妙な振動をしながら転倒した。
すかさず身を起こし乍ら振り返ると、曲がり切ってから転倒したらしい。愛(自転)車モーグ(愛称)と部品と荷物が散乱している。山間部ではあるが車はよく通るので素早く搔き集める。一瞬止まったダンプはそのまま行ってしまった。こちらも別に呼び止めようとは思わない。二台が止まって駆け寄って来てくれた。ダンプの関係した事故だと思ったのかも知れない。
「大丈夫ですか?」「大丈夫です、有難うございます。」すると「本当かね?」と驚く。私は体操を部活でやって居た事もあり、こんな時には反射的に頭や首を守る動作を取る。そのためには転がる事に成るので、派手な転び方に見えたのであろう。
ペダルのビンディングで私と結ばれたモーグも、余儀なく私に付き合って転がったようなので、尚更派手に見えたかもしれない。シャツや手袋がひどく破れ、傷も見えている。帰宅してシャツを脱ぐと、背中にも血が付いているが幸い傷は無い。腕から出て道路に付いたものが背中に転写されたものであろう。
 一瞬の事で、省みても原因が解らない。漸く出した結論としては、ダンプが車線を割って居たからであろう。そうでなかったとすればいつもと違う事は何一つ無かったので、いつものように難なく下りきっていた筈であるから。
 原因は扨置いて、この道のこの辺りは、私の鬼門である。派手な転倒は二度目であり、三度目の正直で次はあの世へ行ってしまわないように祈って置く事にする。
帰宅すると夕方に近く、炊事係としては医院にも薬局にも行っては居られない。
オキシドールで拭いた患部にエタノールを含ませた綿を当てて黒いガムテープで押さえてみた。
悪くない。その辺のテープなどは汗や水ですぐに剥がれてしまう。矢張りガムテープの粘着力は頼りになる。
ところが両端から血や浸出液が少しづつ流れ出て来るので、塞ぐようにして巻き足して行くと、UVカット用の腕貫のようになってしまった。
流石に朝起きても何も漏れ出てはいない。が何せ布のガムテープ、しっかりしている分堅い。肘にも掛かっているので曲げられず、無理に曲げようとすると傷も痛む。
風呂にも入れず、着替えも簡単にはできない。止む無く取敢えず医院に行ってみる事にして身支度を整えて鏡を見ると、腕貫は良い艶を出していて、ロボットの腕のようである。捨てるには惜しくもあるが、背に腹は代えられない。

 医師は「ガムテープなんかを巻いて来たのは貴方が初めてだ」などと大げさな事を言う。
「これでは皮膚呼吸が出来ない、治る訳が無い」
「第一取るのが大変でしょう」と渋面を作る、こちらが本音らしい。
併ししっかりしているようでも、所詮はガムテープ、しっかりしている分隙間もあって、鋏を入れると簡単に切れる。
機嫌を直した医師は、治療しながら言う。「ま、一週間位で薄皮が張って治ると思うけど、これが若い人だと滲出液も多いから」
「治りも早く三日ほどで済みます。」と続くと思ったら「なかなか乾かず治らない。」と言う。
「子供なんかはドクドク出るので、これくらいの傷でもひと月掛かります。」

枯れて、良い事もあるものである。