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石ころ

台風一過



 台風が来るということで主人がおばあさんを迎えに行った。今までは幾ら誘ってもなかなか動かなかったけれど、先日、目眩がしたと聞いたので血圧計を買って行って計り、高血圧であることをくわしく説明して上げたことで、少しは気が弱くなったのか今回は御神輿を上げてくれた。

めったに行ったことのない病院に、タイミング良く村の検診があったので行ってくれた。「こんなことを言ったら悪いけれどムベちゃん、病院も悪くないよ。いろんな人が親切にしてくれて、知っている人に出会ったら尋ねてくれるし、みんなとしゃべっていたらええ気晴らしになるよ。」彼女の病院デビューは新しい生き甲斐となった様子。まずは目出度し目出度し。

「この間はお医者さんが、お薬がばっちり効いて『ok』って言ってくれたよ。」と病んでなを非常に元気な御年87才。
私がゲームをしていると、どんなことをしているのかとのぞき込みに来る。その好奇心が素晴らしい。「私のお昼寝代わり」って説明をすると、「うん、そら良い。暇を見て休まんとな」って理解も早い。

 おしゃべりをしていると偉いなぁと思うところ、見習いたいと思うところ、また深く同情して「良くやったね。」って背中を撫でてしまったこともあるが、「それは絶対違うよ!」って怒鳴りたいこともある。

お風呂を勧めても今日は入らないと言ってきかない頑固さも・・。家では温水器を付けたばかりの新しいお風呂があるから、今夜は入らないときっぱりと断られた。アハハ・・我が家はどうせ古いですよ。


 主人が迎えに行ったとき家の中に姿が見えなくて、探しまわっていると大雨の中を裏庭に出て、溝の掃除をしていたと言うから彼女はただ者ではない。「詰まってあふれると困るがな」と説明してくれた。

「昔は、台風が来たからって一々何処かに逃げたりなんかせんよ。ちゃんと戸締まりをしてじっと家に居たもんや。この頃は回りがいちいち騒いで五月蠅い」という。
「でも、やっぱり一人やったら心細いやろう、みんなで居た方が賑やかで楽しいよ。」って言うと、まんざらでもなさそうに「まあ、私はええけど・・」だって・・。

彼女にとって最上のもてなしは、話し相手になることらしい。とっても熱心に繰り返し話してくれる。私の知らない親戚の端々のことから、近所の曾孫の話。テレビを見ながらのオリンピックの選手の話まであってその幅の広さに驚いた。私は彼女に比べてなんと世間狭いことかと反省。

 しっかりしているけれど、やはり同じ話を繰り返すのは、まるで幼児のようでもあるけれど・・ただ、幼児のように他愛のない話だったら良いのだけれど、そこは歳という垢も匂いもあって子供の相手よりは忍耐が要る。
何しろ敵には87年間の生き方が詰まっている。でも、毒気もあるけれど私は彼女のしゃっきりとしたところ、自分の気持ちをはっきりと言う所が好き。嫌いな所はすぐにお金を出そうとするところ、貧乏人?が札びら切るなって思う。主人にも叱られていたけれど・・。

 すっかり台風の去った今日、私の手を握りしめ満面の笑みで「また、頼むな」と言って主人の車に乗って帰って行った。「何時でもおいで、」そう、また丁々発止とやろうね。スーパーに立ち寄って買い物をして帰ると嬉しそうだった。
「帰って玉葱を干さんとあかん。土間に広げたままになっている。」と、午後のスケジュールも詰まっているらしい。「ほどほどにね」と言っておいたけれど・・。

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