デ某の「ひょっこりポンポン山」

腎がんのメモリー、海外旅行記、吾輩も猫である、人生の棚卸しなど。

腎ガンのメモリー 2 ( 手術~退院 )

2013-09-22 15:24:00 | 腎ガンのメモリー

 (1) 顔つきの悪いガン?

 突然!周りの喧騒が耳に・・・それが麻酔からの目覚めでした。妻が「おとうさん」と呼ぶ声が、耳に入った最初の言葉でした。看護師さんに「目をあけられますか?」と言われ、目をあけるとそこは病室でした。「手術、終わったんやなぁ」と思いました。

 寝返りしようとして背中に激痛が走りました。もしかして全摘? 開腹手術? と思い妻に訊くと、「予定通り腹腔鏡下で一部摘出でした」。つづけて「手術は3~4時間の予定が6時間かかりました」「出血は少なく貯血した血は使わなかったそうです」。

 後に私が知ったことが一つ。手術直後、主治医から妻に「細胞診が出るまではっきりしたことはわかりませんが、見た目に悪性度の高いガンだと思います」と告げられ、切除した現物!も見せられたそうです。いわゆる「ガンの顔つき」はかなり悪いと。

 (2) 術後72時間は絶対安静

 夜になっても術後の耐えがたい痛み・・・はありませんでした。看護師さんに「そろそろ麻酔がきれますから鎮痛剤を点滴しましょうか」と言われ、率直に「お願いします」。点滴されて暫くして、腰のダル痛さがなくなり点滴をお願いして良かったと思いました。

 それにしても看護師さんの仕事のハードなこと! 夜~朝までひっきりなしに患者を見回って記録し、重い身体を支えたり熱いタオルで拭いたりドレーンの排出液を始末・・・。医師も責任の重い困難な仕事ですが、看護師さんの献身的な仕事に感謝、感動でした。

 病院や容態によりますが、3日間の絶対安静(寝たきり)は想像以上の苦痛です。3日後、ベッドを降り立とうとしましたが、立つ!感覚を身体が忘れています。よろめいて看護師さんに抱きつき妻の鋭い視線を浴びました。他意はなくも・・・ちょっと幸せでした。

 (3) 回復力と入院日数と…

 人間の回復力って凄い。立つこともできなかった身体が数分後には壁をつたいヨチヨチ歩きを始め、数時間後には点滴ポールをもって普通に歩けました。翌日は点滴チューブもとれ、階段を上り下りし売店や喫茶室に・・・。5日目、普通食になり食欲旺盛!

 午前6時、検温で目覚めます。洗面、食前の歯磨き、髭剃り。窓を開けると早朝から暑苦しい外気・・・すでに8月でした。ひとたび入院すれば病院食は苦にならず待ち遠しくなります。いわんや1時間半かけて毎日訪れる妻の野菜サラダ、果物はもっと待ち遠しい。

 5日~1週間で退院・・・の病院が多いと聞きます。しかし私の感覚では「順調でも術後一週間は無理!」。そもそも抜糸(抜鉤)したのが6日目でした。内視鏡などを入れる孔!は5か所、抜鉤後もまだ傷口に貼ったガーゼに血や膿が滲み出ていました。

 (4) 病院は…ホテル?商店街?

 個室Bの差額ベッド代は日額8千円、冷蔵庫・TV・長椅子・ロッカー・洗面台・セーフティボックス付。個室Cは5千円、TVがなくミニ冷蔵庫。逆に個室Aは2万5千円、バス・トイレ・キッチンユニット・テーブル付。4万7千円の特室は割愛!

 入院前、「お見舞いご無用」を徹底しましたから、身内を除いては数人。個室とはいえ病室や病棟談話室は鬱陶しいだろうと思い、喫茶室で面会しました。オシャレな喫茶室で、病院にいる感覚を忘れさせます。しばしばそこで気分転換もしていました。

 院内に喫茶2、レストラン3、様々な売店のほかコンビニや美容室や理髪室もあります。喫茶から病室への出前もOK、新聞も病室まで配達されます。病院と言うよりホテル、小さな商店街といった感じで、仕事が厭な人はず~っと居たい!でしょうね。

 (5) 突然の息子の転身

 術後6日目、息子から電話がありました。「急やけど、勤めを辞める」「ひと月ほど前、急に思い立ち〇〇医大の社会人枠の編入試験を受けたら合格した」「この秋に2年次後期編入」。息子は既に30代半ば、妻と娘(1歳)がいるのに、ダイジョ~ブ?

 「まぁ詳しいことは退院してから」と・・・。驚きました。製薬の研究所でガン研究に携わっていましたから、息子にはそれほど違和感のない転身だとは思います。が、お嫁さんも勤めているし、関東から関西に転居必至、順調でも研修医まで4年半無収入。

 お嫁さんに相談なしに進め・・・揉めている由。が、一日経ったら、私、寧ろ息子を褒めてやりたくなりました、よく思い切った!と。ガン研究の延長ではなく「臨床を目指す」との言葉に、並々ならぬ決意を感じました。応援してやりたい!と心から思いました。

 (6) 再びスーツケースをゴロゴロ引きながら…

 術後1週間で入浴可。でも傷口(孔)に絆創膏が貼ってありおっかなくてシャワーのみ。看護師さんに熱いタオルで身体を拭いていただくのも天にも昇る心地ですが、このシャワーのなんとまぁ心地よいこと! 何より看護師さんと異なり羞かしくありません。

 10日目、主治医「明日、退院OKです」。入院前の説明では「3~4週間」でしたが、主治医「最大3~4週間ですが、経過がいいのでご心配いりません」。しかしどうにも不安で「すみません、せめて2週間に」とお願いし、了承していただきました。

 そういう経緯で入院からちょうど2週間後の8月10日、かんかん照りの空を眩しく見上げながら退院しました、入院時とは逆に海外旅行から帰った旅人のようにスーツケースをゴロゴロ引き・・・。晴々!とは行きませんが、入院時の心境とは天地の開きです。

 (7) 退院したら食べたかったもの…

 帰路、レストランで「鰻重」をいただきました。退院したら食べたいNo.1が鰻重、No.2がざるそばでした。美味しさに思わず笑ってしまいました。ちなみにNo.3は天麩羅、No.4はカレーライス(お子ちゃま!)。病院のレストランで我慢したのはこの時のため!

 自宅に帰るとシマジロー(猫)が玄関にごろ~んと寝転がり歓迎してくれました。「シマっ!ただいま」と抱きかかえるわけですが、こんな記述・・・ペットのいない方には笑止千万!でしょうね。子どもや若い女性(50歳あたりで線引き/笑)なら兎も角・・・。

 玄関からリビングに入ると「退院したんやなぁ」とこみあげるものがありました。すぐ、妻が用意した腎ガンに良いとされる枇杷の葉の足湯をしました。今後は「(四足動物の)肉は断つ」と決め、とれたて野菜のジュースで乾杯し退院の歓びにひたりました。

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