北海道新聞 2019年4月6日付社説
「塚田副大臣辞任 問題に幕引きはできぬ」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/293831?rct=c_editorial
塚田一郎国土交通副大臣がきのう、山口県と福岡県を結ぶ下関北九州道路計画の国直轄調査再開を巡り、
地元の安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」と述べた発言で引責辞任した。
巨額の公共事業予算を執行する官庁の副大臣が、
行政の公正性を真っ向から否定するような話を選挙集会で手柄のように語る。
言語道断であり、発言から5日目の辞任は遅すぎたと言えよう。
問題の本質は、公共事業予算の箇所付けに、
政治家の不透明な関与がいまだに影響力を及ぼしている実態があるのかどうかだ。
辞任を幕引きとしてはならず、国会は解明を続けねばならない。
首相は前日まで「塚田氏は職責を果たしてもらいたい」と、野党側の罷免要求を拒否していた。
「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と言ったにもかかわらずだ。
本人の発言撤回と謝罪で事態を乗り切れると考えていたなら、認識が甘すぎる。
決裁文書改ざんがあっても麻生氏を続投させたように責任の所在を明確にせず、
けじめをつけない政権の慢心が新たな問題を引き起こしている側面は否定できまい。
忖度発言は昨年末に塚田氏が、参院自民党の吉田博美幹事長から要望を受けたことが発端だ。
吉田氏は自民党で、下関北九州道路の「整備促進を図る参院議員の会」の会長を務めている。
この際に吉田氏から、首相と副総理の地元事業だと「分かっているな」と念を押されたと塚田氏は発言したが、
吉田氏は否定し、塚田氏も撤回した。
ではどんなやりとりがあったのか。塚田氏と吉田氏は国会に参考人出席し、説明するべきだ。
道路計画の推進に向け、首相は与党議員有志の会の要望書に名を連ね、
麻生氏は整備促進期成同盟会の顧問を務めている。
地元では「安倍・麻生道路」と呼ぶ声もあったという。
政府は調査目的として、
関門海峡を通る第3の道路として渋滞緩和や災害時の代替機能の検討といった観点を挙げている。
だが、こうした理由で地元が整備を要望している道路は全国に少なくない。
必要性より、首相と副総理の顔を立てたというのが実情ではないか―。
そんな疑念を招いたのが塚田発言にほかならない。
公共事業を私物化するような利益誘導政治を根絶し、予算執行の透明化を図る。
長年指摘され、克服できていない課題に政府・与党は真剣に取り組む必要がある。
「塚田副大臣辞任 問題に幕引きはできぬ」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/293831?rct=c_editorial
塚田一郎国土交通副大臣がきのう、山口県と福岡県を結ぶ下関北九州道路計画の国直轄調査再開を巡り、
地元の安倍晋三首相と麻生太郎副総理兼財務相に「忖度(そんたく)した」と述べた発言で引責辞任した。
巨額の公共事業予算を執行する官庁の副大臣が、
行政の公正性を真っ向から否定するような話を選挙集会で手柄のように語る。
言語道断であり、発言から5日目の辞任は遅すぎたと言えよう。
問題の本質は、公共事業予算の箇所付けに、
政治家の不透明な関与がいまだに影響力を及ぼしている実態があるのかどうかだ。
辞任を幕引きとしてはならず、国会は解明を続けねばならない。
首相は前日まで「塚田氏は職責を果たしてもらいたい」と、野党側の罷免要求を拒否していた。
「事実と異なることを述べたのは重大な問題だ」と言ったにもかかわらずだ。
本人の発言撤回と謝罪で事態を乗り切れると考えていたなら、認識が甘すぎる。
決裁文書改ざんがあっても麻生氏を続投させたように責任の所在を明確にせず、
けじめをつけない政権の慢心が新たな問題を引き起こしている側面は否定できまい。
忖度発言は昨年末に塚田氏が、参院自民党の吉田博美幹事長から要望を受けたことが発端だ。
吉田氏は自民党で、下関北九州道路の「整備促進を図る参院議員の会」の会長を務めている。
この際に吉田氏から、首相と副総理の地元事業だと「分かっているな」と念を押されたと塚田氏は発言したが、
吉田氏は否定し、塚田氏も撤回した。
ではどんなやりとりがあったのか。塚田氏と吉田氏は国会に参考人出席し、説明するべきだ。
道路計画の推進に向け、首相は与党議員有志の会の要望書に名を連ね、
麻生氏は整備促進期成同盟会の顧問を務めている。
地元では「安倍・麻生道路」と呼ぶ声もあったという。
政府は調査目的として、
関門海峡を通る第3の道路として渋滞緩和や災害時の代替機能の検討といった観点を挙げている。
だが、こうした理由で地元が整備を要望している道路は全国に少なくない。
必要性より、首相と副総理の顔を立てたというのが実情ではないか―。
そんな疑念を招いたのが塚田発言にほかならない。
公共事業を私物化するような利益誘導政治を根絶し、予算執行の透明化を図る。
長年指摘され、克服できていない課題に政府・与党は真剣に取り組む必要がある。