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音楽大好き男の徒然なる日記

<「鉄路の行方」を考える>3 国の責任 赤字穴埋め策 早々に破綻(北海道新聞)

2023-10-25 | 鉄道
北海道新聞 2023年10月17日付記事
「<「鉄路の行方」を考える>3 国の責任 赤字穴埋め策 早々に破綻」
  https://www.hokkaido-np.co.jp/article/926039/


例えば友人から起業の相談を受けたとする。
その事業は毎年多額の赤字が見込まれ、黒字になる見通しはまるでない。
それでも友人は「親からもらったお金を国債や株で運用して赤字を穴埋めするから大丈夫」と自信満々…。
経営の心得のある人なら
「運用益が減ったらどうする。むちゃな商売はやめておけ」と助言するのではなかろうか。
 
国は1987年の国鉄改革で、そんな事業を実行に移した。
JR北海道の誕生だ。

 
国鉄末期に年間約2,000億円に上った道内の赤字を、大幅な赤字路線の廃止や人員削減で圧縮し、
JR北海道は年間498億円を路線維持に必要な「適正な赤字」と設定してスタートした。
国は、当時の国債利回り「年7.3%」から逆算し、
赤字穴埋めに必要な6,822億円を経営安定基金として与えた。

この事業モデルには、二つのミッションが込められていた。
《1》営業赤字を年間498億円以内に抑制せよ
《2》基金の運用益で赤字を穴埋めして引き継いだ路線を維持せよ――だ。
だから与党の自民党は「ローカル線もなくなりません」
「ローカル優先のサービスに徹します」という意見広告を新聞に掲載した。

ところがバブル経済が崩壊し、金利は年を追うごとに低下。
運用益は経営努力と無関係にみるみる減っていく。
運用益が498億円に達したのは、多額の益出しを行った2021年を除けば発足当初の2年間だけ。
当初見通しからの不足額は1990年代半ばに年100億円台に、
2000年代に入ると年200億円を超える。
事業モデルはすでに破綻していた。

 
同社株の100%を実質的に保有する国には、この時点で
《1》事業モデルを再構築する
《2》さらなる赤字路線の廃止を世に問う――という選択肢があったはずだ。

しかし国は何の方針も示さず、JR北海道は
「経費を切り詰め、
 高速化や営業強化、
 事業の多角化により自力で増収を図る」という第3の道を選択した。

 
1990年に登場したスーパーホワイトアロー(札幌~旭川)を皮切りに、
スーパー北斗(札幌~函館)、スーパーおおぞら(札幌~釧路)など時速130キロで突っ走る新型特急を相次いで投入。
冬場もできるだけ定時運行を優先し、客の取り込みを図った。
テレビCMなどで「冬こそJR」というキャンペーンを張った、あの頃だ。
 
JR北海道はコロナ禍の影響で大幅な減収となった2021年3月期決算まで、
営業赤字(連結ベース)が498億円を上回る事態を回避し続けた。
その陰で、何より優先しなければならない安全対策が後回しにされた。
2011年以降、車両火災や脱線などの事故が相次ぎ、
レール検査データの改ざんも発覚。
2014年には国土交通省から監督命令と事業改善命令を受ける。
 
国から「安全管理体制の再構築」という新たなミッションを与えられたJR北海道は、
ここで「路線維持」の旗を捨てる。
島田修社長(当時)は翌2015年の記者会見で「事業範囲の見直しが避けられない」と述べ、
2016年11月に単独では「維持困難」な10路線13区間を正式に発表した。

 

運用益が当初の想定通りなら、
JR北海道には2023年3月期までの36年間で計1兆7,928億円が入るはずだった。
しかし、実際に入った運用益は、国などによる下支え分を含めても1兆2,884億円。
不足分の総額は5,044億円に上る。
 
国は2011年以降、安全対策や設備更新への支援を名目に資金支援を行い、
2021年には「抜本的な経営改善」を条件に3年間で総額1,302億円の支援パッケージを打ち出した。
各メディアは「手厚い支援」と報じたが、
本当にそうだろうか。

これらの追加支援を含めても当初の見込みには、3,352億円届かない。
 
十分な支援が適切な時期に行われていたら、
JR北海道は安全対策や利便性向上にもっと効果的に投資できていたはずだ。
国の対応は遅きに失した。

 (文章執筆:特別編集委員 鈴木徹 氏)

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何度か繰り返しのコメントになりますが、
述べさせていただきます。

大半の人は知っていた。
国鉄から分割民営化して、「北海道」「四国」は絶対に黒字になれない事を。
それを承知で強行された。

NTTのケースを考えたら”民営化”そのものは間違ってはいないのかもしれない。
だが「我田引水」ならぬ「我田引鉄」が祟ったうえに
東海道新幹線開業が、
それまで黒字だった国鉄の「兆単位の赤字→破綻」の始まりとなった。

だから、”分割”がいけなかったのだ。
特に北海道と四国はやってはいけなかった。

また、当時はバブル期だったから気が付かなかったが、
自民党員など一握りの人間だけで「整備新幹線」開業後の「並行在来線」をJRから切り捨てて
沿線自治体に「丸投げ」することが、今の北海道のように
地域の力を殺してしまったのだ。

そして、予想されていた「少子高齢化」。
民営化されたJRが元気でいられるのは首都圏などの
「3大都市圏」だけで、
それ以外の地域は羽越線・山陰線など
「幹線」でさえ存続の難しさに苦しむ。

JRはやはり「失敗作」だったのだ。

せめてもの解決策は・・・?

自分の持論としては、やはり「JR再編」ではないか。
地域別でなく、「在来線&貨物」VS「高速鉄道(新幹線・リニアモーターカー)」「ホールディングス(持ち株会社)」として。
在来線、特に幹線・貨物輸送路線ネットワークの保守整備は「国営化」して、
従業員は公務員化して雇用を保証すること。
社員の大量退職、それにより整備新幹線の建設はおろか、除雪さえ行き詰った
「JR北海道」の反面教師から学べたことだ。

そして、国土交通省も「高速道路&整備新幹線の建設」を優先事項から外して
深川留萌道・日高道・三陸道など、現在無料の高速道路を
一律有料化すること。
そして今後、「片側一車線」が前提の高速道路の建設計画をストップさせること。
・・・当たり前だろう?
今やってることは「我田引鉄」で破綻した国鉄の道路版だからだ。

それよりも、一般国道のバイパス建設と「道の駅」の整備のほうを優先すべきだろう。
また、大型商業施設中心を郊外に設置してきた「街づくり」も
交通弱者のために「鉄道駅」と一体化することだろう。

行き過ぎたモータリゼーションが公共交通を弱体化させ、
これらの従業員の過酷な環境に対しても報酬で厚遇してこなかった。
さらに少子高齢化が今の路線バス乗務員や物流ドライバー不足に至った。
これらの従業員への待遇改善・雇用安定化のためには
道路建設に廻してたカネをこちらや「モーダルシフト」に廻すこと。

もう「待ったなし」の状況にまできている。


2023年10月28日付訪問者数:167名様
お付き合いいただき、ありがとうございました。

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