北海道新聞 2023年3月3日 付記事
<どうする並行在来線 函館~長万部間の行方>
オール日本の視点必要 JR九州初代社長・石井幸孝さん(90)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/810808/
(聞き手)――北海道新幹線の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営分離された後、
函館~長万部間の鉄路をどう考えたらいいでしょうか。
「旅客だけを考えたら、需要がほとんどない中ではいらないという主張もあると思いますが、
北海道の物流の大動脈なので、北海道経済のことを考えると、
必要な路線です。
国防上の観点からも、やめるべき路線ではありません。
経営分離後、仮に旅客をやめて貨物専用線のようになっても
イベント列車や旅行ツアーの列車を走らせるといった使い方ができると思います」
(聞き手)――貨物専用線となった時の運用の仕組みはどうしたらいいでしょうか。
「JRから経営分離された後の並行在来線の “線路使用料” と “貨物調整金” のルールを見直すべきです。
高速道路では、国が維持管理をして、
トラックやバス、マイカーを走らせる利用者がその都度使用料を払っています。
並行在来線も線路は国や道が所有し、貨物や旅客会社が使用料を払ったらいいと思います」
(聞き手)――近著「国鉄―『日本最大の企業』の栄光と崩壊」(中公新書)では、
新幹線物流の必要性を訴えています。
「人口減少時代、特に北海道、東北、九州ですが、
乗客が少なくなった新幹線を遊ばせていたら、国家としては大変なロスです。
将来的には各社の新幹線部門とJR貨物を統合した『新幹線株式会社』をつくり、
全国的な戦略を考えるべきです。
それは株式の半分を国が持つ形で半官半民でやってもいい。
オールジャパンの鉄道という視点で議論するべきです」
(聞き手)――JR各社から新幹線を取り上げてしまうと経営がかなり厳しくなるのではないですか。
「旅客のメインの会社は札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5社で、
利益の出る都市部の旅客鉄道をやります、
50年後くらいにはそういう形で収斂(しゅうれん)していくと考えています。
ローカル線は厳しいですが、必要な路線は国が責任を持って残すか、
地域で必要と考えるなら第三セクターをつくって残すしかないと思います」
(聞き手)――北海道は札幌とその周辺しか残らないのではないですか。
「道内の宗谷線、石北線、石勝・根室線、釧網線を私は『北方4線』と呼んでいますが、
国境に面しているという観点から国策上、廃線にしてはいけない。
各沿線では農業や酪農、水産業など食糧供給地帯としての役割も果たしています。
毎年100億円くらいの線路設備維持費は国が負担するしかありません。
本来受け取るはずだった『経営安定基金』の運用益の減少分を考えると、
そんな無理な提案だとは思いません」
(聞き手)――国鉄分割民営化は1987年でした。大きな改革が必要なのでしょうか。
「30、40年たてば時代は変わります。
国鉄改革という大手術自体は間違っていなかったけれど、
その後の健康管理がうまくいかず、JR北海道の経営が難しくなり、
並行在来線を巡るルールも合わなくなっています。
民営化から今年で36年。
そろそろ軌道修正するべきだと思います」
いしい・よしたか
1932年生まれ。
広島県出身。
東大卒業後、日本国有鉄道入社。
開発期のディーゼル車両設計に携わった後、常務理事・首都圏本部長などを歴任。
87年分割民営化にあたってJR九州初代社長に就任。
社長を10年、会長を5年務めた。
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<どうする並行在来線 函館~長万部間の行方>
オール日本の視点必要 JR九州初代社長・石井幸孝さん(90)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/810808/
(聞き手)――北海道新幹線の札幌延伸に伴ってJR北海道から経営分離された後、
函館~長万部間の鉄路をどう考えたらいいでしょうか。
「旅客だけを考えたら、需要がほとんどない中ではいらないという主張もあると思いますが、
北海道の物流の大動脈なので、北海道経済のことを考えると、
必要な路線です。
国防上の観点からも、やめるべき路線ではありません。
経営分離後、仮に旅客をやめて貨物専用線のようになっても
イベント列車や旅行ツアーの列車を走らせるといった使い方ができると思います」
(聞き手)――貨物専用線となった時の運用の仕組みはどうしたらいいでしょうか。
「JRから経営分離された後の並行在来線の “線路使用料” と “貨物調整金” のルールを見直すべきです。
高速道路では、国が維持管理をして、
トラックやバス、マイカーを走らせる利用者がその都度使用料を払っています。
並行在来線も線路は国や道が所有し、貨物や旅客会社が使用料を払ったらいいと思います」
(聞き手)――近著「国鉄―『日本最大の企業』の栄光と崩壊」(中公新書)では、
新幹線物流の必要性を訴えています。
「人口減少時代、特に北海道、東北、九州ですが、
乗客が少なくなった新幹線を遊ばせていたら、国家としては大変なロスです。
将来的には各社の新幹線部門とJR貨物を統合した『新幹線株式会社』をつくり、
全国的な戦略を考えるべきです。
それは株式の半分を国が持つ形で半官半民でやってもいい。
オールジャパンの鉄道という視点で議論するべきです」
(聞き手)――JR各社から新幹線を取り上げてしまうと経営がかなり厳しくなるのではないですか。
「旅客のメインの会社は札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5社で、
利益の出る都市部の旅客鉄道をやります、
50年後くらいにはそういう形で収斂(しゅうれん)していくと考えています。
ローカル線は厳しいですが、必要な路線は国が責任を持って残すか、
地域で必要と考えるなら第三セクターをつくって残すしかないと思います」
(聞き手)――北海道は札幌とその周辺しか残らないのではないですか。
「道内の宗谷線、石北線、石勝・根室線、釧網線を私は『北方4線』と呼んでいますが、
国境に面しているという観点から国策上、廃線にしてはいけない。
各沿線では農業や酪農、水産業など食糧供給地帯としての役割も果たしています。
毎年100億円くらいの線路設備維持費は国が負担するしかありません。
本来受け取るはずだった『経営安定基金』の運用益の減少分を考えると、
そんな無理な提案だとは思いません」
(聞き手)――国鉄分割民営化は1987年でした。大きな改革が必要なのでしょうか。
「30、40年たてば時代は変わります。
国鉄改革という大手術自体は間違っていなかったけれど、
その後の健康管理がうまくいかず、JR北海道の経営が難しくなり、
並行在来線を巡るルールも合わなくなっています。
民営化から今年で36年。
そろそろ軌道修正するべきだと思います」
いしい・よしたか
1932年生まれ。
広島県出身。
東大卒業後、日本国有鉄道入社。
開発期のディーゼル車両設計に携わった後、常務理事・首都圏本部長などを歴任。
87年分割民営化にあたってJR九州初代社長に就任。
社長を10年、会長を5年務めた。
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