山奥の幅の狭いカーブの多い道をトコトコ運転していると、後ろにベッタリとくっついて走行している車に気づいた。もうすぐ夕暮れが近い。
あんまりベッタリと近づいているので、気が冷や冷やしてついスピードをあげてしまった。
制限速度時速30キロのところ50キロで走っている。
私の運転技術じゃもうこれがギリギリなんだよ。
追い越してほしいがカーブが多く離合車がいつ来るか予想がつかないし道幅が狭いので左に避けることも出来ない。
バックミラーで見れば青年末期の男性が運転している。
本当にしょうもない兄ちゃんだね。
この道には獣のタヌキや鹿やがいてね。たま~に道路に出没する。そうなると、人間は本能的に急ブレーキを踏んでしまうのだよ。
それと、あまりいないけど対向車が時々来ることがあって、向こうも対向車はいないだろうと調子に乗ってカーブのところなぞセンター線を越えて突っ込んでくることもある。
そうすると人間はやっぱり急ブレーキをかけてしまうのだよ。
こんな山奥でこんな時間に事故を起こしたら、救急車もパトカーもJFもすぐにはこれないだろうに。
そんなこと考えながらカーブを曲がっていたら本当に対向車が不意にきた。
センター線をギリギリ。本能的に急ブレーキをかける。がすぐにアクセルを踏んでスピードあげる。
バックミラーを見る余裕はなかったけど、私がドッキリしたんだから兄ちゃんも相当ドッキリしたんじゃあないのかい。
これであおり運転やめると思ったけど、さにあらず。
トホホ、こんな兄ちゃんどうにかしてよ。
と、そのうちに分岐点で違う峠の方へ彼は曲がって行こうとした。
その時、その兄ちゃんは首をおもいっきり私のほうに向けてにらみつけて行った。
押さえていた怒りが沸き上がる。
「テメーなんかそっちの峠で脱輪しろー」心の中で悪しき気を送る。
あの雰囲気だと他にいっぱいあおり運転してるだろうからあの兄ちゃんにはたくさんの悪し気が集まっているに違いない。
脱輪ですめばいいけれど。