桜にはいろんな顔がある。
15の時に見た桜は青空が
良く似合っていた。
そうだ、あの時は希望や夢が
あった。
二十歳の時に見た桜。
世の中はそう甘くないと
ぼんやりと思いはじめた頃。
桜は薄曇りに見る方が
美しいと思った。
40過ぎては桜は妖しい。
ゾッとする冷たさを
感じさせる夜桜が
いい。
そして今は
やっぱり、桜が吹雪きのように
散って行くのが
切なくて愛おしく美しい。
側溝に散った花びらを
薄桃色のまま、海に運んで
くれるように雨に頼んで
おいたからね。
さくら散る一人で逝くのは淋しいと
さくらなど散らしてしまえ夜の雨