夏の風物詩である蝉時雨。
蝉達の命の賛歌。
地上にでて、命を次へ繋ぐことの喜びの恋の歌、
というふうに受け取っていた若い日の私。
夏がキラキラ輝いていたあの頃。
歳を重ねた今はどうだろう。
もちろん、本筋は変わらないけど、恋が
終われば、命も終わる。
その事が大きく胸に染みて、
何だか哀れに思うときもある。
キラキラの夏が何だかギラギラと残酷な夏
と思えるようになった。
存分に鳴いて命を使いきり、
土へと戻っていけるようにとどこか
祈るようなしんみりとした気持ちに
なるお年頃。
蝉時雨命の限り君探す
蝉時雨やがて土へと戻りゆく
蝉時雨雄のみ鳴くを許されて
実印を押す手を止めて蝉時雨
決断の狭間に聞こゆ蝉時雨