スーパーに買い物に行くと
白いプラスチック袋に
梅酒の梅と書かれたものが
売られていた。
おそらく10粒程度、梅酒に
漬け込まれたアルコールタップリの
梅が入っているのだろう。
ああ、梅酒なんてもう数年間飲んで
いない。
どんなものだったかなと考えた瞬間。
あの飴色の甘く香り豊かな風味が
舌に脳裏にくっきりと甦った。
断酒を決意してからこの方ほぼ
酒は遠ざける事が出来てる方だ。
本当に私はアルコール依存症
一歩手前なのだろうか。
診断を受けた訳でもないのに。
私の心に住み着く悪魔なる者が
誘い拐かすようにいう。
それにこれは酒ではないし、
それを食べたとしても
断酒を破ることでもない。
洋酒を含んだお菓子を食べるのと
同じではないか。
ちょっとぐらいいいじゃないか。
人生を楽しく生きよ、と。
袋を手にしてどのくらいの
時間考えただろうか。
一袋、カゴに入れレジに
向かう。
買い物から帰って
食物を冷蔵庫に仕舞うや否や
梅酒の梅を一粒口に入れる。
たちまちアルコールが
全身を駆け巡る事を実感する。
あっと言う間に梅酒の梅は
全てなくなる。
私は買ったのが一袋だったことを
深く悔いた。
せめて、後3,4袋買えばこんなに
中途半端な状態にはならなかったのに。
ああ、そうだ。
流しの下にワインを隠してた。
助かった。これで酔いを
味わう事が出来る。
酩酊する意識の中でやっぱり
私は依存症だろうと思った。
そして、
再び断酒を決意した。
春暮れて悲劇演じる喜劇かな