あの日
寝たきりの母親のそばにいた
ある娘さん
「津波だ 逃げろ」
近所の人の呼びかけに
黙って笑って
首を横にふった
それが娘さんの最後の姿となった
・・・・・・・・・・・
人は
一瞬の選択で
動物以下にも
神々のようにも
いや神以上になりえる
それはおそらく
命あっての・・
金があってのモノ種という
世界にあって
必死に築こうとしたもの
心に蓄えたものを
現しているのかもしれない
あの日
首を横にふった娘さんは
命を軽んじたのでは無く
誰よりも命を愛しんだのだ
そして
死でさえ侵せないもの
闇に閉ざされないものを
今際のとき
感じ取ったのであろうか・・
「私は娘の姿に救われました」
父親の弁であるが
これらのことを
十分に推し量れないわたしは
幸せ過ぎるのかもしれない