天空海闊

湖 上

ポツカリ月が出ましたら、

舟を浮べて出掛けませう。

波はヒタヒタ打つでせう、

風も少しはあるでせう。


沖に出たらば暗いでせう、

櫂から滴垂(したゝ)る水の音は

昵懇(ちか)しいものに聞えませう、

――あなたの言葉の杜切れ間を。


月は聽き耳立てるでせう、

すこしは降りても來るでせう、

われら接唇(くちづけ)する時に

月は頭上にあるでせう。


あなたはなほも、語るでせう、

よしないことや拗言(すねごと)や、

洩らさず私は聽くでせう、

――けれど漕ぐ手はやめないで。


ポツカリ月が出ましたら、

舟を浮べて出掛けませう、

波はヒタヒタ打つでせう、

風も少しはあるでせう。

       
       (中原中也)



*月明かりだけの世界も
現代が失ったものであろうか。

色んなものがライトアップされているが
綺麗だと思ったことがない。

人工的なものに馴れ過ぎて
本来の色、音さえ分からなくなっている。

闇の中だけの真実がある。

闇を恐れず、見つめてみよう・・

命の躍動に触れ、時を止めてみよう・・

コメント一覧

辻風
goyaさん、何時でもおいでください。
goya
美味しい珈琲豆でもお持ちします(?)
ウイスキーのほうがいいですか…
(なんか変ですね?笑)。

また遊びに来ます。
辻風
goyaさん、お元気でしたか?

そう言えば私の好きな風景画はどこか
『人のささやかな営み』を感じるものが
多いのです。
夕暮れには何か不思議な力を感じます。
・・黄昏にぽつぽつ灯る窓の明かり・・・
哀愁が有ってとても好きです。
goya
お久しぶりです。
綺麗な月あかりのころですね。

空が深い青にそまりはじめる頃
(この頃をブルーモーメントといいます)、
窓からこぼれるオレンジの明かり…
この人工の灯りに、
人のささやかな営みを感じるとき、
なぜか子供の頃を思い出します。
私はとても好きな時間帯です。
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