舟を浮べて出掛けませう。
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
沖に出たらば暗いでせう、
櫂から滴垂(したゝ)る水の音は
昵懇(ちか)しいものに聞えませう、
――あなたの言葉の杜切れ間を。
月は聽き耳立てるでせう、
すこしは降りても來るでせう、
われら接唇(くちづけ)する時に
月は頭上にあるでせう。
あなたはなほも、語るでせう、
よしないことや拗言(すねごと)や、
洩らさず私は聽くでせう、
――けれど漕ぐ手はやめないで。
ポツカリ月が出ましたら、
舟を浮べて出掛けませう、
波はヒタヒタ打つでせう、
風も少しはあるでせう。
(中原中也)
*月明かりだけの世界も
現代が失ったものであろうか。
色んなものがライトアップされているが
綺麗だと思ったことがない。
人工的なものに馴れ過ぎて
本来の色、音さえ分からなくなっている。
闇の中だけの真実がある。
闇を恐れず、見つめてみよう・・
命の躍動に触れ、時を止めてみよう・・
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辻風
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