それは
小さな国の近海でのこと
もう一息のところで
風に阻まれ 寒さに凍り
荒波に落ちかける燕たちがありました
そのとき だれかのよぶ声で
もう一度舞い上がると
大きな黒い雲の
わずかな隙間を潜り
身をよじるようにして
滑空したのです
こうして嵐からぬけると
あの なつかしい山々の
くっきりとした緑が
燕たちを迎えていました
そこでは
いろんな花がそよ風にゆれ
食べ物もたくさん
燕たちは もう
うれしくて うれしくて
皆で 宙返り
そして あいさつしました
山さん ありがとう
あのとき よんでくれて
たすかったよ
こうして
よんだのは 海ってことに
だれも気づかないのでした
でもそんなことよりも 海は
皆が無事に帰れたことが
うれしそうでした
「おかえりなさい」
「もう少しだよ」