天空海闊

稀な存在 

  「老人たち」

ある家で作業をしていたところ

一台の車がとまり 数名の老人が出てきた

外は梅の蕾を窄めるような小雪が舞っている

 わたしは手をとめ 見ていると

 一人の痩せて足元の覚束ない女性を

 他の老人が寄り添い 両脇を抱えるように

それこそ 大切な宝を運ぶように

ゆっくりとその家に入ってきた

わたしはすっかりその光景に魅入ってしまった

何でも 高等科の校長だった家人の友人たちとか

もう何度も来れそうもないので との話であった

互いの存在は かけがえのないものである

 

そんな世界が ここにもある

 

  

  「子宝」

予定より七日延びたが まだ出てこない

 病院に行っては 帰っている様子

わたしは知らないそぶりで 吉報をまつ

それから 数日経った夜中の二時ごろ

 きれいな壺から銀貨が沢山出てきた夢で

目が醒めた

朝方になり 夜勤の妻からのメール

「一時ごろ産まれたって・・」

 

子宝ってこのことだ! 

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