聞き慣れない声に惹かれ
庭にやってきた
北国からの訪問者
その鳴き声の主の
姿は見たことがありません
家の曇りガラスを透し
籠の形がうっすらと見えるだけです
それでもお互いの声で
何となく様子を伺っていたのです
その声が一段と高くなる時があります
その時は必ず籠の近くに人の影が見えます
ところが
とても寒い日が続き
その声がどんどん小さくなり
人の影もあまり見なくなりました
それがとても気になり
庭の梅の枝から
様子を見ていたのです
どうしたことでしょう
今日はまったく声がしません
もう太陽が昇ろうとしています
その時でした
突然人の大きな声がしました
籠の近くで何度も同じ声を出しています
それからしばらく静かになり
ガチャリと家の扉が開きました
目を赤くした男が
何かを持っています
黄色と青色の混じった
はじめて見る
美しい羽の小鳥が
手に包まれていました
でも頭が力なく垂れ
瞼は閉じています
やがてそれは
庭の木のそばの
土に埋められました
渡り鳥は
不思議そうに
いつまでも
その冷たい土を眺めていました
それから数日して
渡り鳥の姿も
見えなくなりました
小鳥を一人ぼっちにさせたことが
多かったことを
男は悔やんでいました
でも後で気づいたのです
小鳥には
友達ができていたのを
(これは実際に生じたことに基づいています)