天空海闊

霧の中(再編)

 

不思議だ、霧の中を歩くのは!
どの茂みも石も孤独だ。
どの木にも他の木は見えない。

私の生活がまだ明るかったころ、
私にとって世界は友だちにあふれていた。
いま、霧がおりると、
だれももう見えない。

ほんとうに、自分をすべてのものから
逆らいようもなく、そっとへだてる
暗さを知らないものは、
賢くはないのだ。

不思議だ、霧の中を歩くのは!
人生とは孤独であることだ。
だれも他の人を知らない。
みんなひとりぼっちだ。


「ヘッセ全集10 孤独者の音楽」高橋健二 訳新潮社 より



ヘッセの作品は、

人は自分で自分の道を見つける必要がある、

と言う孤独性で一環している。

その前提において、

この詩を書いた、当時のヘッセは全体主義への警告を
いち早く発していた。

それは孤高の戦いでもあった。

霧は互いを見えなくさせる作用を
もっている。

今、私たちを見えなくさせようとする
霧がある。

様々な場面で、人は孤独であることを

痛感する。

孤独に耐えて、見えてくる真実がある。

しかし、愚かさと横暴の故、
それに気づくことさえ困難になった。

喉から搾り出すような
(目撃証人たちの)声が、今も霧の中から
聞こえてくる。

昨今での全体主義とは何か?

だれがそれに耳を傾けるだろう。

はらから、幼子たちのために。




コメント一覧

辻風
goyaさん、ありがとう御座います。

私は専門家の分析等はあまり読みません。
従って知識も無いのと同じです。
詩は本来各々がその時々の感性で捉えるものと
思っています。
>人に囲まれた中で感じる孤独の淋しさを…。
なるほど、これも納得いきます。

是非またgoyaさんの解説をお聞かせ下さい。



goya
はじめまして。

詩はとても好きです(でも知識はありません)。
「霧の中」昔、読みました。
一人ぼっちの孤独より、
人に囲まれた中で感じる孤独の淋しさを…。

追:詩も知識なく、「又三郎」もそうですが、
  今回の「辻風」も去るのが早いから…、
  少し、私には敷居が高いかもと思いつつも、
  また、遊びに来ます。
辻風
角レ*****だったりして(笑
一応このブログだけのHNにします。
オリーブ
辻風さん、いいHNですね!
又さんの内面に秘めたものを表しているように思います。
又三郎改め 『辻風』
ヘッセを読む人は自分の内にある求道精神の昇華の過程を
追体験できると言われていますが・・
自分と他者の壁を取り除くワードもあるような気がします。

(この度、又三郎のHNが多いための改名です。)
オリーブ
こういう詩を読むとなんか安心するのはなぜでしょう?
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