古い様式の建物の中 湿った漆喰の臭いに 靴音が響き 管理人が日に一度 気難しそうな顔で様子を伺うが それには気づかない素振りで 只管 机に向かう 案が浮かばないときは 唯 廊下の窓を暫く眺めている 曇りや雨ともなれば 窓の輪郭さえ判りづらく 漆喰の臭いと 薄っすらとした闇が 纏わり付いてくる 長い廊下の奥から 時折聞こえてくる 楽器の音色が まだ見ぬ世界へ わたしを誘う 後 いつまで ここに 居ることだろう 金平糖の踊り