折れ曲がった細道を少し下り、
赤土が肌けた高架を抜けると、
小さなお好み焼きの店があった。
ふるさとを捨てこの町に来て、
何時しか店の常連になっていた。
家庭の味のするお好み焼き、
火照った体を冷やしてくれるカキ氷、
そして瞳の大きな娘がいたが、
未だ天候の会話だけであった。
その日もその瞳を目当てに
店の戸を開けた。すると時々目にする
15才ぐらいの少年が来ていた。
何でも水頭症とのことで、
見かけよりも言葉が幼く聞こえた。
「・・ぼ、ぼくは自分をわきまえてるから・・」
「**ちゃん、何を言ってるの~」
「今まで通りでいいんよ~」
娘が笑いながら答えている。
「そうよ、気にすることないから」
店の主が相槌をうつ。
娘と少年の談笑から、
幼馴染であることが分った。
女主人も加わったその場所は、
ささやかな幸せの香りがした。
私は代金をそーと置くと静かに
店を出た。
灯がぼんやりと遠ざかった。
それ以来その店には行ってないが、
店も赤土が肌けた高架も今は無い。
路地の所々の古ぼけた石畳だけが
当時の面影を残している。
男は大きな河になれ
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