プレイボーイで名をはせた青年
いつもの別れの余波なのか
親父の店で遭遇した2人の
凍りついたような視線が交差
忌まわしいものでも見るかのような
娘の表情を浴び
困惑している様子・・
それから数日して
青年がよく通う
小料理屋のママさん
不穏な気配を感じて 近所の青年の住む貸家に立ち寄り
多量の睡眠薬を飲んで
意識もうろうとなった青年を発見
「しっかりしなさい」と頬をたたき
喉に指を入れ薬を吐き出させ
事無きを得た
「なにもいいことがない・・」
「あなたが若いからよ、お母さん泣かせたらいけん」
周りの憧れの二枚目が起こした
意外な恋の顛末は
男女間の機微に疎いわたしには
別の世界のできごとのようであった
気風のよいママさんの店の繁盛期は
バブルの最盛期と重なる・・
今は異種の店舗となり
ひっそりとした佇まいの一角にある
あのできごとを覚えているのは
近くにそびえる
イチョウの樹ぐらいであろうか